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AI駆動国家の鍵は“アジャイル・ガバナンス”、 『デジタル・ニッポン2026』が提言
「AIBB TOKYO 2026春」のパネルディスカッションより
自由民主党は2026年5月20日、『デジタル・ニッポン2026』」というホワイトペーパーをまとめ、翌日には松本 尚 デジタル大臣に提言した。同提言でのキーワードが「アジャイル・ガバナンス」だ。ホワイトペーパーのとりまとめを主導したデジタル社会推進本部長・平井 卓也 氏とANAホールディングスの津田 佳明 氏、KDDIの黒田 千春 氏が、AI(人工知能)技術のビジネス実装に特化したカンファレンス「AIBB TOKYO 2026春」(主催Pivot Tokyo、2026年5月25日、26日)のパネルディスカッションに登壇し、デジタルとリアルの融合がもたらす未来像について意見を交わした。(文中敬称略)
黒田 千春 氏(以下、黒田) :KDDI 渉外・広報本部 政策調整部レギュラトリーエキスパートの黒田 千春です。ここにお持ちしたのはホワイトペーパー『デジタル・ニッポン2026』の一部です。「AI委員会」などAI(人工知能)技術に関連する新しい組織を設立し、司令塔として推進していく方針が示されています。私自身、内閣府の規制改革推進会議事務局に出向しており、このホワイトペーパーの策定・実装に官民連携で関わってきました。
官民で挑む「責任あるアジャイル・ガバナンス」
黒田 :なかでも強く印象に残っているのが「責任あるアジャイル・ガバナンス」というキーワードです。もう一つは「AI技術が万能になる中で、残された人間にしかできないことは何か」という根本的な問いかけです。
平井 卓也 氏(以下、平井) :自民党 デジタル社会推進本部長の平井 卓也です。私が「アジャイル・ガバナンス」という概念を打ち出したとき、実は役所の方々からは戸惑いの声もありました。日本の官僚機構は非常に優秀ですが、歴史的に「失敗すると出世できない」という文化が根強く、どうしてもリスクを避けがちだからです。
しかし、不確実性の高いAI時代においては、小さく失敗し素早く修正していく「アジャイル(俊敏)」なアプローチが不可欠です。だからこそ、国の方針として「責任あるアジャイル・ガバナンス」を明確に位置づける必要がありました。現場の公務員も「結果責任は負うものの、挑戦の過程における柔軟な軌道修正は認められる」という共通認識を持て能力を解放しやすくなります。
そもそもアジャイル・ガバナンスとは、あらかじめ固定されたルールで縛るのではなく、技術の進化や社会の変化に合わせて、国や企業が対話しながらルールを継続的にアップデートしていく仕組みを指します。法規制がテクノロジーの発展スピードに追いつかないAI時代にあって、これこそが日本が世界をリードできるガバナンスモデルになると確信しています。
黒田 :本当にその通りですね。現場にいると、トップダウンで「この方向へ進む」と明確に示されることの重要性を痛感します。
平井 :ただ日本社会を実質的に支配しているのは、山本 七平 氏が、かつて指摘したような“空気”です。企業でも社長の方針に対して「それはおかしいのではないか」と言いづらい空気が流れることがありますよね。
黒田 :その「言いにくい正論」を最近は、あえてAIシステムに代弁させている企業もあるようです。「AIがこう言っています」と伝えることで、角を立てずに空気、すなわち場の同調圧力を変えるという、賢いというか、日本的なAI技術の使い方です(笑)。
デジタルを前提にリアルの価値がより高まる
黒田 :ホワイトペーパーが問いかける「人間にしかできないこと」について、津田さんはどうお考えですか? 航空会社は、まさに接客の最前線に立たれています。
津田 佳明 氏(以下、津田) :ANAホールディングス 上席執行役員 未来創造室長の津田 佳明です。これまで、航空会社のような企業での接客現場は“感情労働”であり、人間が担うべき領域だとされてきました。一方で“頭脳労働”は人間が知識を競う場でしたが、生成AI技術が登場したことで形勢は一変しつつあります。
ただ、ホワイトペーパーにも記述されていますが、例えば美味しい料理を作ること、丁寧な接客をすること、あるいは建設現場でのリアルな作業などは、絶対にAIシステムやロボットだけでは代替できません。
平井 :まさに“職業価値の完全な逆転”が近づいていますね。これまで知識重視で高給を得ていたホワイトカラーの仕事がAIシステムに置き換わる一方で、人間の身体性や感性を伴う現場の仕事を担う人材の価値が高まっており、彼らを「ミリオネア・ブルーカラー」とでも呼ぶべき時代が来るのではないかと感じています。
例えば、優れた料理人の価値はこれから、さらに暴騰するでしょう。AIシステムは、レシピを考案したり栄養価を計算したりは得意です。しかし、目の前にある食材の個体差を見極め、厨房の空気を感じ取り、即座に手元で調整して一皿を仕上げることは不可能です。
リアルな空間で人間が提供する、おもてなしや、ライブの体験価値に対する給与やチケット代といった対価は今後、どんどん上がっていくはずです。
津田 :デジタル化が極限まで進むからこそ、現物の世界とデジタルをつなぐ“リアル”の価値が際立つのですね。
