- Talk
- 共通
リスキリングの一歩を、組織の“仕組み”に変えた企業でDXは自走する
「CIO Japan Summit 2026」のパネルディスカッションより
個人のキャリアと組織の方向性を擦り合わせる
西山 :ここまでのお話を踏まえて、現場を経験した山口さんだからこそ、その立場から経営層へ伝えたいメッセージはありますか。
山口 :私自身が今回のリスキリングを通じて実感したのは、個人のキャリア設計と会社の方向性を「擦り合わせる」ことの重要性です。私が自ら動けたのは、「経費を削減したい」という動機だけでなく、自分のキャリアを見つめ直し、会社の進む方向を社内エンジニアから教えてもらえたからでした。
つまり、会社が提示してくれたツールや方向性に沿って試行錯誤できたことで、個人と組織の目標のベクトルを合わせて進められました。その擦り合わせの場が個人やつながりに頼るだけでなく、組織的に設計されていれば、もっと多くの人が動き出すはずだと思っています。
私自身がリスキリングに挑戦し、試行錯誤する中で見えてきた「ボトムアップでDXを進めるための3つの仕組み」について、現場のリアルな気付きとして経営層の方々にお伝えしたいと思います。
1つ目は「マネジメントスキルの育成」です。前例のないことでも個人の可能性を見出し、挑戦させる土壌をつくる。そんな柔軟な思考を持つマネージャー層の育成が欠かせません。
2つ目は「キャリア相談の人事制度」です。個人の「ありたい姿」と「会社の進む道」をつなぐ専門の相談窓口を設けることで、社員を正しい努力の方向に導いていきます。特に女性社員は、結婚・出産・育児とキャリアの両立について、ロールモデルが乏しいない中で悩む方も多く、ライフデザイン全体から伴走できる仕組みが求められています。
3つ目は「経営との双方向コミュニケーション」です。現場の小さな実践や口コミを経営層が拾い上げ、制度変更や新たな打診につなる環境作りが大切です。現場の声が届かないまま突然制度が変わると、社員のモチベーション低下を招く場合があります。
平塚 :今、山口さんがおっしゃっていた「シェア」の仕組みは本当に重要で、私が米Googleで学んできた「10X思考」にも通じます。10Xとは「10倍の成果を出すこと」を意味しますが、Googleではイノベーションを「昨日とは違う明日を今日作ること」だと定義しています。現状の制約を全て脇に置き、10倍の成果を出すにはどうすればよいかを言語化し、周囲を巻き込んでいく。それがDX推進の本質だと思っています。
挑戦を後押しする環境こそが、DXの未来をつくる
西山 :最後に、本セッションの参加者に向けて、メッセージをお願いします。
岸 :生成AI技術によって、組織は否応なく変わっていくと強く感じています。将来何が起こるか、まだ見通せない部分もありますが、下の世代に悪い遺産を残さないよう、今から真剣に想像を巡らせる必要があると思っています。
平塚 :10Xデザイン協会で掲げているように、10倍の成果を出す思考法のポイントは「コラボレーション」と「イノベーション」です。「予算がない、人材がいない、経験がない」という制約を考えず、どうなれば多くの人を今より10倍幸せにできるかを、未来から逆算して言語化し、周囲を巻き込んでいただきたい。勇気を持って未来を語ることから、変革は始まります。
山口 :私のような人材を増やしていきたいとおっしゃっていただけることは、本当にうれしく思います。そのために、前例のないことに挑戦しようとする社員に対して「できないのでは」と疑うより、まず背中を押してあげて欲しいです。挑戦を後押しする環境が整っていると実感できれば、社員のモチベーションは自然と上向いていきます。実績がなくても可能性を見出す姿勢を、ぜひ続けていただきたいと思います。
西山 :お話を振り返ると、DX推進の本質は、ツールや制度よりも「人」にあるということが改めてよく分かりました。山口さんの実体験が示すように、個人の小さな一歩が組織を動かし、平塚さんの言う「仕組み」がそれを文化に変えていきます。そして岸さんがおっしゃるように、経営の覚悟がその土台を支えます。三者がそろって初めて、DXは自走し始めるのだと思います。
本日は貴重な話をありがとうございました。
