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リスキリングの一歩を、組織の“仕組み”に変えた企業でDXは自走する
「CIO Japan Summit 2026」のパネルディスカッションより
デジタル技術を導入しても、それを使いこなす「人」が育たなければDX(デジタルトランスフォーメーション)は定着しない。個人のリスキリングを、どう組織全体の変革へつなげればよいのか。タキヒヨー、住友生命保険、日本10Xデザイン協会の担当者が「CIO Japan Summit 2026」(主催:マーカス・エバンズ・イベント・ジャパン、2026年5月開催)のパネルディスカッションに登壇し、現場から始まった挑戦を組織文化に育てる仕組みや、その過程で直面する壁を乗り越える工夫について、意見を交わした。モデレーターはZIPAIR Tokyo CIO(最高情報責任者) IT戦略開発部長の西山 大介 氏が務めた。(文中敬称略)
DXを動かすのは「スキル」より一歩を踏み出す「覚悟」
西山 大介(以下、西山) :ZIPAIR Tokyo CIO(最高情報責任者) IT戦略開発部長の西山 大介です(写真1)。まず、山口さんにタキヒヨーでのご経験についてお聞きします。事務職からデータエンジニアに転身されたとのことですが、その経緯を詳しく教えていただけますか。
山口 比奈子(以下、山口) :タキヒヨー マーケティングセクションマーケティングチーム兼DX推進チームの山口 比奈子です(写真2)。私は2018年に事務職として入社し、今年で9年目を迎えます。現在はデータエンジニアという業務に携わっていますが、元々IT分野には苦手意識があり、今もプログラムを書くことはできません。
転機は2020年のコロナ禍でした。EC(電子商取引)サイトを運営する新規部署への異動を機に、ITと初めて向き合う立場になりました。チームの課題を俯瞰する中で気付いたのは「エンジニアのポストが空いている」という事実です。自分がスキルを身に付ければ採用や委託の経費削減につながる、そんな動機から独学を始めましたが、最初は挫折の連続でした。
西山 :ご自身の課題意識が起点になったのですね。実際に独学を始めてから、どのように学びを深め、現在の取り組みにつなげていったのですか。
山口 :2022年よりHTML&CSSを約1年間学びました。有料版にした途端挫折にしたため、2023年にプログラミングスクールに約半年間通いアプリケーション開発を学びましたが、実務で生かしきれないジレンマを抱えていました。そこで、せっかくなら生かせることを学びたいと思い、スクール卒業後、社内のあるエンジニアに相談を持ちかけました。
「会社に貢献し、実務で生かしたい」という思いから、会社の方向性を踏まえて「何を学べばいいか」とアドバイスを求めたところ「社内で『AWS(Amazon Web Services)』の利用を広めたいが、AWSの資格を持つ人がいない」という社内の課題を知りました。この課題解決こそが社内の大きなニーズだと実感し「AWS Cloud Practitioner」資格の取得を目標に据えました。
約2カ月間集中して学び、実際に資格を取得した後は「AWSを一度触らせてください」と上長に打診しました。快諾を得て、設計は社内エンジニアに教えてもらいつつ、生成AI技術のみでSQLを書きながらデータ分析基盤をAWS上に構築し、外部委託していたシステムの内製化に取り組みました。この実績が認められて、今では全社向けの需要予測システム開発にも携わっています。
西山 :振り返って、ご自身の中で大きく変わったのはどんな点だと思いますか。
山口 :プログラムを書くことができない自分でも「できないことはない」という確信が生まれたことが、一番大きな変化です。生成AI(人工知能)技術と対話する中で自分の思考が深まり、多角的な視点も身に付きました。
そして何よりうれしいのは、私のような非エンジニアでも実績を示せたことで「自分にもできるかもしれない」というモチベーションの連鎖が社内に生まれていることです。後輩がAWSの資格取得に挑戦していると聞いた時は、本当にうれしかったですね。

