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アクア、コインランドリー用洗濯機をクラウドに接続し「スマートシティのプラットフォーム」を目指す

志度 昌宏(DIGITAL X 編集長)
2017年10月12日

2020年に向け3段階で機能を拡張

 そこに向けアクアは、次世代Cloud IoTランドリーシステムを3段階で機能拡張を図る計画だ。新機種投入の第1段階では、まずは基本機能として、洗濯機や乾燥機のオーナーが、それぞれの稼働状況や売上状況の確認や、利用状況に応じた料金の設定変更、障害発生時の機器の再立ち上げなどを遠隔地から実施できるようにする(写真3)。

写真3:AQUA Cloud IoTランドリーシステムがオーナーに提供する管理画面の例

 利用者に対しては、マルチ端末によるサービス提供のほか、洗濯/乾燥が終了したことをメールで伝えたり、近隣にあるコインランドリーをスマホから検索したりを可能にした。さらに、洗濯/乾燥が終了するまでに店舗に戻れない利用者に対し、帰着予定時間まで洗濯機/乾燥機のドアを開けられないようにするドアロックの延長サービス(有料)を提供可能にした。

 2018〜2019年の第2段階ではAPI(Application Programming Interface)を公開し、異業種とのシステム連携や、電子マネーなどを使った決済サービスなどを投入する。2020〜2021年の第3段階では、クラウド上に蓄積されたデータを分析することで可能になる各種サービスを投入したい考えだ。

 データに基づくサービスの例としては、天気予報と連動した「洗濯予報」の配信や、暮らし方や季節に合わせて適切な洗濯方法のお薦めなどを挙げる。ただし具体的なサービスは検討中で、利用者ニーズに合致させるためにアイデアソンやハッカソンを今後、実施していくとしている。

 アクアは2012年1月、旧三洋電機の一部事業を継承して始動した会社。コインランドリー用洗濯機は、三洋電機が1991年に国産第1号機を開発している。その後、2005年にはコインランドリーにサーバーを置きネットワークでつなぐ「ITコインランドリー」を展開。同社によれば、「現在の国内シェアは75%に上り、全国1600カ所、2万1000台の洗濯機/乾燥機がネットにつながっている」。

 既存のITコインランドリーの機器も今後は、データコントローラー経由でクラウドに接続できるようにする。ITコインランドリーとクラウド版との違いについて、ランドリーグループマネージャーの秋馬 誠 氏は、「従来は店舗のサーバーにデータが蓄積され、しかも、ディスク容量の物理的制限から古いデータは捨てていた。今後は、すべてのデータがクラウドに集約されるため、データに基づく経営が可能になる」と説明する。吉田 氏も「データの蓄積により、機器の設計や予防保守への切り替えなども可能になる。実現に向けた検討を始めている」と話す。

 次世代Cloud IoTランドリーシステムが利用するクラウドは「Microsoft Azure」。2016年9月にアクアと日本マイクロソフトは、家電IoTサービスの開発に向けた協業を発表していた。新システムは、その成果の第1弾になる。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名アクア(ハイアールアジアグループ)
業種製造
地域東京
課題共働きや清潔志向の高まりなどからコインランドリーの需要が高まっているが、同時にカフェやペットショップなどとの併設など、単に「洗濯・乾燥のための場」ではなくなってきており、時間をより有効に活用したい消費者ニーズに対応していく必要がある
解決の仕組み洗濯機/乾燥機をIoT(Internet of Things:モノのインターネット)デバイスとしてクラウドに接続し、稼働状況などをオンラインで把握し、オーナーなどが遠隔地から料金変更したりクーポンを発行したりを可能にする。今後は、クラウドからAPI(Application Programming Interface)を公開し、他業種連携やデータ分析に基づく新サービスを提供していく
推進母体/体制アクアと、クラウド活用で協業する日本マイクロソフト
活用しているデータコインランドリー用の洗濯機や乾燥機の利用状況や稼働状況を表すデータ
採用している製品/サービス/技術日本マイクロソフトのクラウドサービス「Microsoft Azure」、IP-VPNなどのセキュリティ技術
稼働時期2017年12月