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納品した機械のダウンタイムを削減、充填包装機械大手テトラパックにおけるデータ分析の軌跡

冨永 裕子(ITアナリスト/コンサルタント)
2017年11月14日

ソフトウェア開発の最新方法論「DevOps」をモデル作りに適用

 センサーデータにより機械の状態をモニタリングすることを決めたテトラパックは2012年、データ分析のための開発プロジェクトに着手。センサーキットや基本的なアルゴリズムを開発した。多数のデータポイントからデータを得るとなると、その分析にも専用のプラットフォームが必要になるからだ。

 アナリティクス専用のプラットフォームを整備し顧客にサービスを提供できたのは2015年のこと。それだけの期間を経て初めて、「機械をモニタリングするワークフローを顧客へのサービスとして提供できるようになった」(Sandberg氏)。このとき整備したアナリティクス専用プラットフォームのアーキテクチャーは、「その後も継続的に改善を続け、サービス提供の基盤として重要な役割を果たしている」(同)という。

ソフトウェア開発分野の方法論「DevOps」をモデル作りに適用

 センサーを付ければ、これまで以上に多くの種類のデータは集められる。だが、そのデータをビジネス課題と照らし合わせて理解しなければ、ビジネス面での成果を高めるのは難しい。Sandberg氏は、「これまでの試行錯誤で学んだのは、ビジネス課題の理解とデータの理解に、より多くの時間をかけるべきだということだ」と強調する。

 そのためにテトラパックが採用しているのが、ソフトウェア開発分野で採用が増えている「DevOps」(開発と運用の融合)の方法論。データの準備から、モデルの構築、検証、デプロイまでの一連のプロセスを、データサイエンティストとビジネスアナリストが協力しながら、短期間に繰り返すことで、より高いビジネス成果を得られるようにする。

 この方法論を、Teradataは「AnalyticsOps」と呼ぶ。Teradataのコンサルティング部門Think Big Analyticsの協力を得て採り入れたテトラパックは今、「モデルの構築と検証を4週間単位で繰り返している」(Sandberg氏)。これにより、顧客からのフィードバックを迅速に反映させた最新のモデルを常に利用できることになる。

専門家の知識を統合し予測的アナリティクスに取り組む

 今後は、機械のモニタリングにもAnalyticsOpsを試す予定だ。テトラパックは現在、予測的アナリティクス(Predictive Analytics)に取り組んでいる。まずツールを導入し、100個の予測モデルを構築する。そのモデルを日々、運用しながら問題の原因が明らかになれば、専門家の知識をモデルに統合し、より洗練されたモデルとして最適化を図りたい考えである。

 Sandberg氏は、「センシングデータに基づくアナリティクスは、顧客ロイヤルティを高め、より良い提案と製品の改善に役立てられる」として、今後もアナリティクスをビジネスに役立てる取り組みを続ける考えを示した。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名スウェーデンのテトラパック
業種食品加工・飲料容器製造
地域世界各国
課題顧客である飲料メーカーが導入している機械の稼働効率を高め、原材料やパッケージ資材の廃棄ロスや無駄を削減する
解決の仕組み機械にセンサーを付け、状態のモニタリングをサービスとして提供できるようにした。モデリングの精度を高めるために「DevOps」のアプローチを取り入れ、モデルの改善速を高めた
推進母体/体制テトラパック、Teradataのコンサルティング部門「 Think Big Analytics」
活用しているデータ機械の部品各種に付けたセンサーデータ
採用している製品/サービス/技術Teradata Think Big Analyticsが提供するコンサルティング
稼働時期2012年から。2017年には全社横断組織「CoE(Center of Excellence)」を設置した