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JFEエンジニアリング、データ解析基盤「Pla’cello(プラッチェロ)」でAI利用の敷居下げDXを推進

水野 智之(X-Techライター)
2019年7月16日

 JFEエンジニアリングでは2003年から、環境プラントを対象にした遠隔監視に取り組んできた。「グローバルリモートサービスセンター」を置き、生産に関するデータを集中管理する。監視対象は環境プラント以外にも海外にも広げてきた。

 リモートサービスセンターにおけるPla’celloは、AI(人工知能)やBI(ビジネスインテリジェンス)を使った現場によるデータ解析の基盤だ。その役割は、「データサイエンスに関し、プラント技術者の敷居を下げること」(粕谷氏)にある。「情報学や統計学に通じる技術者は少ないが、プラントの専門知識など、データサイエンスの適用領域に関する知識を持つ技術者は多数在籍している」(同)からだ。

 自社の技術者が使いやすい解析環境を提供することで「プラント知識を持つデータサイエンティストを社内で育成する」(粕谷氏)という狙いもある。

 AIにおいて技術者への敷居を下げる仕組みの1つがテンプレートの活用だ。AWSから呼び出して利用している深層学習のクラウドサービスがもつテンプレートを活用する。「多数のテンプレートが用意されており、それを選定しながら必要なAI機能を実現する。コードが書ける技術者もいるが、テンプレートを使うことで敷居は圧倒的に低くなる」と粕谷氏は指摘する。

 一方のBIについては、「当社が求める表現力を持つツールがなかったため自社開発した」(粕谷氏)。同ツールについては「事業部からも評価されている」(同)という。

事業部門と支援部門のギャップ埋め現場でのDXを推進

 Pla’celloは、どんな用途に利用されているだろうか。粕谷氏は、「プラントのセンサーデータの多くが時系列データ。相関から外れたデータを検知するなどで異常予知に利用している」と語る。

 たとえば、ゴミの焼却。地域や季節によって温度が異なるため、これまでは手動で燃焼調節に介入する必要があった。そこに対し「燃焼状態を映した画像を数値化し、過去の手動介入時のデータを組み合わせ、燃焼が強すぎるのか弱すぎるのかを検知できるようにした。手動介入する件数が減ってきている。いずれは、制御プログラムそのものに搭載する構想もある」と粕谷氏は説明する(写真4)。

写真4:ゴミ焼却プラントへのAI活用例

 他にも、橋梁における高力ボルトの締め付け点検業務の効率化や、RFIDタグを利用した部材の管理システムなどを構築している。

 今後は、「事業部の期待と、(DX推進部隊が)支援できるところの“ギャップ”を、今まで以上に埋めていきたい。データ解析では、機能の向上と教育を繰り返す。併せて、データマネジメントの拡大とサービス化に着手する」と粕谷氏は力を込める。

 社内の普及促進に向けては、これまでも、ポータルサイトや社内教育プログラムを用意したほか、プラント技術者が参加するアイデアソンやハッカソンも開催してきた。今後は、これまでに実施してきた事例の整備と、事業部側でのキーマン育成に取り組む」(粕谷氏)計画だ。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名JFEエンジニアリング
業種製造
地域東京都千代田区(東京本社)、横浜市(横浜本社)
課題設計・構築したプラントの運用を対象にした事業を拡大したい。プラントに強い技術者はいるがデータサイエンスには強くない
解決の仕組みプラントの稼働状況などを示すセンサーデータに基づく運用支援策の開発をデータサイエンスに詳しくない技術者が取り組むためのデータ解析プラットフォームを提供する
推進母体/体制JFEエンジニアリング
活用しているデータプラントのセンサーデータ、過去の人手によるシステムへの介入履歴など
採用している製品/サービス/技術クラウドサービス「AWS」(AWS製)、深層学習のAIサービス、BIツール(自社開発)
稼働時期データ解析プラットフォーム「Pla’cello(プラッチェロ)」は2018年11月