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JFEエンジニアリング、データ解析基盤「Pla’cello(プラッチェロ)」でAI利用の敷居下げDXを推進

水野 智之(X-Techライター)
2019年7月16日

エネルギー/環境など社会インフラシステムを設計・構築するJFEエンジニアリングが、AI(人工知能)/IoT(Internet of Things:モノのインターネット)を使ったデジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組んでいる。同社ICTセンター センター長の粕谷 英雄 氏が、2019年6月に開催された「AWS Summit Tokyo 2019」に登壇し、AI/IoTのためのデータ解析基盤「プラッチェロ」の位置付けや活用方法などを解説した。

 「くらしの礎を創る、くらしの礎を担う」--。エネルギーや環境などの分野で社会インフラシステムを設計・構築するJFEエンジニアリングが掲げる企業メッセージだ。同社ICTセンター センター長の粕谷 英雄 氏は、「当社の事業スキームは、プラントの設計・調達・建設という『創る』中心から、プラント運用を『担う』への変革期にある。その変革には、データの活用が重要になる」と強調する(写真1)。

写真1:JFEエンジニアリング ICTセンター センター長の粕谷 英雄 氏

システム関連会社への“丸投げ”止め変化が起こる文化に

 粕谷氏がJFEエンジニアリングに入社したのは3年前。当時の情報システムについて粕谷氏は、「システム関連会社に“丸投げ”の状態であり、部門の独自システムが乱立していた。ただ事業全体はうまく回っており業務量は増えてきていた」と振り返る。

 多くの問題を抱えながらも“丸投げ”から脱するために、「少数の人間でできることから始めていった」(粕谷氏)という。リーダー層を含めて人材を採用しながら、既存業務の実状を把握し、可能な範囲からシステムを刷新していった。「情報システムを自らの手に取り戻し自分達で運用することで、変化が普通に起こる文化やシステムにしたかった」(粕谷氏)からだ(写真2)。

写真2:JFEエンジニアリングにおける組織作りの背景

 経済産業省が2018年9月に、デジタルトランスフォーメーション(DX)に向けたレガシーシステムの問題を指摘する『DXレポート』を公表した際も、「DXレポートが示した『2025年の崖』には共感するところが大きかった。当社も今DXに踏切らないと、いずれ『損失』が出ると考えていた」(粕谷氏)という。

 2019年6月時点のICTセンターは、(1)ICTソリューション支援部、(2)AI・ビッグデータ活用推進部、(3)基幹アプリケーション開発部の3つの部からなっている。支援部は確実性やセキュリティを、活用推進部は新規性や速度を、開発部は機能をと、それぞれが重視する視点は異なっている。

 だが粕谷氏は、「これらは当社のインフラとして連動しなければならない。各部の役割は分担していても、一体感をもって業務を下支えするかたちを目指している」と語る。

データ解析プラットフォーム「Pla’cello」を構築

 ICTセンターが、JFEエンジニアリングの改革のためのプラットフォームとして構築・運用するのが、2018年11月にAWS上で稼働させたデータ解析プラットフォーム「Pla’cello(プラッチェロ)」である。

 粕谷氏によればPla’celloは、「『Plant』と、イタリア語で“頭脳”の意味を持つ『Cervello』を組み合せたペットネーム」。緑と赤からなる専用ロゴもデザインした。「緑はプラントの安定とエコでクリーンな様子、赤はプラントの運転とエネルギッシュな様子をそれぞれ表している。ロゴの形状も、直方体がプラントを表し、脳の形や扉を開けているイメージも表現した」(同)という(写真3)。

写真3:データ解析プラットフォーム「Pla’cello(プラッチェロ)」のロゴとペットネームの由来