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前田建設、脱ゼネコンに向けシステム環境をAWSに集約しアジャイルな内製化にシフト
アジャイルシフトにより社内システムの統合基盤を開発
アジャイル開発を習得したことで、社内システムの統合基盤をも開発するようにもなった。高橋氏自身、「これまで基盤を統合するという動きは全くなく、画期的」と評するほどだ。
具体的には、「開発生産性を高めるために、システム構成をマイクロサービス化し、API(アプリケーションプログラミングインタフェース)連携によって組み立てられるよう工夫した」(高橋氏)。たとえば、「ユーザー管理やログイン情報は全社共通であり、システムごとに作る必要はない。ログイン認証やユーザーマスターは一括管理し、REST APIで提供する」(同)仕組みにした。
さまざまな開発のノウハウは、アジャイル開発チームからIT部門全体へフィードバックされる。それにより、「全社ITの底上げが図れている。アジャイル開発チームはフルスタック化が進み、契約書や設計図書などの管理システムなどのほか、スマートフォン用阿プア李ケーションも内製化できるなど、大抵のことは社内で開発できることが分かった」と高橋氏は胸を張る。
DXに向けベンチャー企業とも共創
その前田建設が現在、取り組んでいるのがAI(人工知能)技術やデジタルトランスフォーメーション(DX)といった新しい概念の全社展開である。そのための一環として、新技術や概念に関する情報をコミックにして社内発信したり、社内からアイデアを募集し素早く実装したりと、文化の醸成を図っている。
コミックに登場するキャラクターは、チャットシステムのインタフェースにも採用している。同キャラクターは「全社システムに共通のインタフェースとして発展させたい」(高橋氏)考えだ(写真4)。
加えて、ベンチャー企業との連携拡大も図る。ベンチャー企業との共創(オープンイノベーション)のために前田建設は「場」と「仕組み」を用意する。まず場となるのが「ICI総合センター」。茨城県取手市に、「ベンチャー企業が持つ技術やアイデアを社会実装するための環境」(高橋氏)として開設した(写真5)。
共創を加速する仕組みとしては、(1)ベンチャー企業を資金面で支援する「MAEDA SII(Social Impact Investment)」、(2)経営面を支援する「ベンチャーインキュベーション」、(3)実事業のためのラボとなる「愛知アクセラレートフィールド」を用意する。
高橋氏は、「ICTはビジネス課題の解決や業務の生産性向上に不可欠であり、開発の高速化と柔軟性の確保にはアジャイル技術の導入が効果的だ。だが、まだ勝ちパターンはない。さまざまなトライを素早く実施し、失敗もしながら正解に近づいていくのが良い」と、トライ&エラーを続ける考えを示した。
企業/組織名 | 前田建設工業 |
業種 | 製造 |
地域 | |
課題 | 従来のゼネコンモデルから脱却し「総合インフラサービス企業」に事業転換したい |
解決の仕組み | 差別化を図るためのシステム開発をアジャイル手法で内製化する。併せてベンチャー企業との共創によりデジタルトランスフォーメーションを図る |
推進母体/体制 | 前田建設 |
活用しているデータ | 業務システムや外部サービス、IoTシステムが取得・管理しているデータなど |
採用している製品/サービス/技術 | 全社共通基盤としてのクラウドサービス「AWS」 |
稼働時期 | 完全なクラウド環境への移行は2020年度を予定 |