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コマツ、保守部品のサプライチェーンをクラウドベースの「NPS(New Parts System)」に全面刷新へ
建機大手のコマツが、保守部品のサプライチェーン管理システムをグローバルで全面刷新中だ。プラットフォームとして米Inforが提供するサプライチェーンのクラウドサービス「Infor Nexus」を利用する。コマツ情報戦略本部 ICT 改革室 グローバルコーディネーショングループGMのナターリア・メテリョーワ氏が、Infor日本法人が東京・赤坂で2019年7月に開催した「Infor Nexus Launch発表会」に登壇し、選択の経緯などを語った。
コマツ(小松製作所)は、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)建機などをグルーバルに展開している。主な事業領域は、建機(コンストラクト)と掘削機(マイニング)だ。M&A(企業の統合・買収)にも取り組み、2019年時点では、世界に9つのマザー工場をはじめ84の拠点を持っている。
中期経営計画においてコマツは、「平均的な企業より高い成長率を目指している。どのようにイノベーションに取り組み価値を生み出していくかで成長の戦略が描けるため、ビジネス改革や組織変革にも取り組んでいる」と情報戦略本部 ICT 改革室グローバルコーディネーショングループGMのナターリア・メテリョーワ氏は話す(写真1)。
事業の2割を占めるパーツのサプライチェーンが重要に
そのコマツが現在取り組むプロジェクトの1つが、保守部品(パーツ)を対象にしたサプライチェーン管理システムの全面刷新である。「世界のどこにいても、パーツがいつ届くか全員が同時に理解できるように、情報が常に連携され『真実は1つ』になっている環境」(メテリョーワ氏)の実現を目指す。
メテリョーワ氏によれば、「パーツは、コマツのP/L(損益計算書)の中でも20%を占めるほどに伸びている。一方で日本から送っているパーツの出荷費用もかなりのボリュームになっている」
建機の使用期間が長いことが、パーツの需要を伸ばしている。「自動車の総使用時間が約2500時間だとすれば、建機は約1万2000時間、掘削機なら約7万5000時間。その間に交換するパーツの費用は、建設機では新しい機械1台分、掘削機では2台分になる」(メテリョーワ氏)からだ。
パーツの種類も多く、事業としても重要な位置を占めるパーツ。それだけに、必要な部品を必要な拠点に、いつ届けられるかが、従来にも増して重要な課題になってきた。メテリョーワ氏は、「パーツのサプライ状況を確認するために各拠点のメンバーが集まるグローバル会議を開くなど、泥臭く時間がかかることもやっていた。メールも言葉の壁や時差が問題だった」と打ち明ける。
システム環境にしても、「日本はシステムを個別に手作りするのが大好きだ。従来システムはバッチ、バッチの連続で情報が1つにまとまっておらず、集計にも時間がかかっていた」(メテリョーワ氏)。
米国から「New Parts System」プロジェクトを始動
こうした状況を打破するためにコマツは「New Parts System」プロジェクトを立ち上げ、米国拠点から導入を始めた。メテリョーワ氏は、「米国でOKだからといって、日本に導入しても大丈夫といるわけではない。日本でのサービス導入に向けては利用部門とのコミュニケーションが重要と考えている」と語る。
その一例として「利用部門がメリットを感じられるように、これまで複数画面で操作・確認が必要だったパーツ輸送のコンテナ情報に、1つの画面で完結できるようにした」(メテリョーワ氏)という。
さらにNew Parts Systemでは、「地味に見えるが、パーツの入荷タイミングを平準化させられる。たとえばコンテナが1度に20個も届いてしまうと、スタッフを集め夜間に作業するといったことが発生してしまう。急ぐ必要がないパーツについては日程を遅らせて、作業量が少ない日に到着するようにもできる」(同)と説明する。
New Parts Systemプロジェクトは今後、4人のプロジェクトマネジャーが中心になり、2年間に6段階を踏みながら、日本を含むグローバル展開を図る計画だ。
New Parts Systemを構築するに当たり、コマツがプラットフォームに選んだのは、米Inforが提供するクラウドサービスの「Infor Nexus」だ。選定に当たっては、「本当に一番良いシステムを導入するため、日本企業として慎重に検討した。さまざまな観点から比較資料も作成した結果、Infor Nexusが最上位になった」とメテリョーワ氏は明かす。
米ニューヨークで開かれたInforのイベントにも足を運び、Infor Nexusを導入済みの企業による講演にも複数出席した。そこでは「非常に大きなコスト削減につながった事例が確認できた。登壇した企業はいずれも1年で投資を回収できていた」(メテリョーワ氏)。また「Infor Nexusはプラットフォームであり個別にカスタマイズしない点も良いと感じた」(同)ともいう。
Infor Nexusによるシミュレーションにも期待する。「追加コストを支払ってでも早く届けたいパーツや、逆に遅くても問題がないパーツを管理できる。港湾のストライキや天災などによるルート変更も容易になる。個人が旅行サイトでできていることが、企業サービスとして実現できるのではないか」とメテリョーワ氏は語る。