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アシックス、“Direct To Consumer”に向けてマスターデータを全世界で統合へ
国内外に54社を置いてスポーツ用品を販売するアシックスは、グローバル共創に勝ち抜くために顧客との直接的なつながりを築こうとしている。そのために世界規模でのマスターデータ管理の役割を現場に移管している。同社IT統括部 執行役員 統括部長の富永 満之 氏が東京・品川で2019年9月6日に開かれた「Informatica World Tour 2019」(主催:インフォマティカ・ジャパン)に登壇し、マスターデータの整備プロジェクトについて語った。
アシックスの拠点は、日本国内が7社、海外に47社ある。全社の売上高は、「2000年からの15年間で年間売上高は3倍以上になり4000億円を超えている。海外比率も2005年に50%を超え、現在は約75%になっている」と、アシックスのIT統括部 執行役員 統括部長である富永 満之 氏は話す。
そうした事業環境にあって、重要度が高まっているのがデジタル戦略の実行だ。アシックスのデジタル戦略について富永氏は、(1)Shift to “Direct To Consumer”、(2)Digitalization、(3)Global Competitionの3つの強化点を挙げる(写真2)。
Shift to “Direct To Consumer”とは、顧客接点を増やすこと。その理由を富永氏は、「米Amazon.comに代表されるEコマース市場は、ますます大きくなっている。アシックスのブランドメッセージを直接伝えるためには、顧客接点を増やすことが、より重要になっている」と説明する。
Digitalizationは、製品に対して「モノとしての価値ではないものを、いかに負荷していけるか」(富永氏)を指す。Global Competitionは「NikeやAdidasなどの1兆円以上を売り上げるプレイヤーと、どう競っていくか」(同)という課題である。
リージョンごとの個別最適により商品説明がバラバラに
これらのデジタル戦略をグローバルに展開するなかで、これまでのオペレーションにおける課題も浮かんできた。その1つが、「コマースサイトにおける商品説明が、リージョン(地域)ごとにバラバラ」(富永氏)という点だ。たとえば同じ靴でありながら、説明文が翻訳されて掲載されているのではなく「日本、米国、欧州のそれぞれが別の説明を付け加えていることもあった」(同)という。
個別に説明文を追加することは「商品数が膨大になれば大きな手間になる。それ以上に、製品のブランド訴求という観点からみても不適切だ」と富永氏は指摘する。
別の課題として富永氏は「商品の出荷遅延が発生することもあった」と話す。「これまでリージョン単独で開発や購買に取り組んできたが、グローバル展開が進むなかで、リージョンごとの個別最適になっていたオペレーションが足かせになった」(同)からだ。
改善目標として富永氏は、「理想的には、アシックス製品を使っているスポーツ選手が大会で優勝すれば、その製品をすぐ提供できるなど、マーケットの感動をすぐに伝えられるところまで目指したい」と語る。
そこでアシックスが取り組むのが。マスターデータの統合だ。リージョンごとの個別最適により「商品マスターの管理システムが多岐にわたり、進捗管理が見えなくなっていた」(富永氏)ためである。2019年年初に始動した。