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カブドットコム証券、顧客接点強化に向けITの自前主義を捨てSaaSに邁進中

指田 昌夫(フリーランス ライター)
2019年10月17日

口座開設促進は前年比77%増に

 それでもCRMの効果は確実に出てきているという。たとえばMarketing Cloudを使うメール配信では、合計130種類のメール文言をタイミングよく配信する仕組みを構築した。文言は、顧客を4種類のシナリオ(口座開設、株式取引、信用取引、FX)に分け、それぞれのシナリオの、どの段階にいるかを想定し半年をかけて制作した(図3)。

図3:Marketing Cloudを使ったメール配信の施策

 結果、4種のシナリオのうち、株式取引以外は前年比で成果が改善。口座開設のKPI(重要業績評価指標)では前年比でプラス77%など、大きな効果が出ている。

 SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)を使って金融知識の読み物を配信するコンテンツマーケティングにも乗り出した。配信コンテンツはSalesforceの「Social Studio」で管理する。ただ小松氏は「SNS活用はまだ試行錯誤の段階だ」とする。

 今後も段階的にSalesforceの利用拡大を進め、1年後には、ほぼすべての顧客データをSalesforce上で処理したい考えだ。そのうえで、情報を1つにまとめて多角的な分析ができるデータ基盤「カブコムDMP」の構築を目指す(図4)。クラウド化しても独自性にこだわるあたりには“技術のカブコム”のDNAは健在なようだ。

図4:2020年のカブドットコム証券のビジョン

 ちなみにカブドットコム証券は2018年、証券取引システムのAWS(Amazon Web Services)への移行を発表しており、基幹系システムについてもクラウド環境への移行を進めている。

 カブドットコム証券は2019年冬、KDDIとMUFG(三菱UFJフィナンシャルグループ)の合弁による「auカブコム証券」としてサービスを開始する。日本を代表する通信企業と金融企業がジョイントして始める新しい金融会社になることも、自前にこだわるプライドを捨て、クラウド基盤による顧客優先のサービス開発体制へのシフトを後押ししたようだ。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名カブドットコム証券
業種証券
地域東京都千代田区
課題自社開発により個別業務の最適化を図ってきたことが、顧客接点を強化するための顧客情報共有を難しくしていた
解決の仕組みCRM(顧客関係管理)などの仕組みをSaaS(Software as a Service)に切り替え、顧客データ管理の基盤を構築する
推進母体/体制カブドットコム証券、Salesforce.com日本法人、テラスカイ
活用しているデータ各種の顧客情報
採用している製品/サービス/技術CRMの「Salesforce.com」、マーケティングオートメーションサービスの「Marketing Cloud」、カスタマーサービスの「Service Cloud」(いずれも米Salesforce.com製)
稼働時期2018年12月にMaketing Cloudを稼働し、以後順次。全体ビジョンは2020年に実現させる計画