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日立物流、顧客のサプライチェーンの最適化に向け「デジタル事業基盤」を構築

水野 智之(X-Techライター)
2019年10月24日

データ連携支えるガバナンス専任者まで育成

 デジタル事業基盤の構築プロジェクトでは、経営戦略本部と営業統括本部それぞれの担当役員がリーダーに立ち、「両者が旗振り役になってプロジェクトを推進していった」(佐野氏)。

 データモデルの作成や、データの利用・分析に当たっては業務知識や業務システムの理解が重要になる。そのため、同プロセスには業務に精通している要員をアサインした。

 データ事業基盤を活用するための人材も育成した。要件定義、データ収集、見える化、分析などの各段階で必要になる、データコンシェルジュ、データアーキテクト、データアナリスト、データサイエンティストなどである。

 さらにデータガバナンスを専門に担う「データスチュアード」の役割も用意した。「さまざまな会社からデータを収集するため、それらデータの信頼性を保つためにデータスチュアードは不可欠」(佐野氏)との判断からである(写真3)。

写真3:データ事業基盤の活用に必要な人材を育成した

 並行してデータマネジメントの仕組みの構築には、業務システムの開発とは異なるノウハウが必要にもなる。そこでは「そのためのノウハウを持つSIer(システムインテグレーター)の力も必要だ。インフォマティカの技術サポートは有効」と佐野氏は話す。加えて同社では、富士通など複数のSIerやセイコーエプソンといった先進ユーザーにヒアリングし「失敗しない道を学ぶ」(同)こともした。

トータル在庫の削減や売れ筋商品の販売ロスの減少の効果も

 デジタル事業基盤を構築したことで成果も出始めている。ロジスティクス情報の活用事例では、「工場から卸までの在庫情報を可視化し、基準在庫を見直しトータル在庫を減らす。あるいは、輸入品の入荷予定日をリアルタイムに可視化し売れ筋商品の販売ロスを減らしたり過剰在庫を減らしたりする顧客が出てきている」と佐野氏は説明する。

 プロジェクトごとの輸送費を可視化した事例もある。佐野氏によれば、日本のトラック運送では、たとえば直前に頼むと料金が3倍近くになるといったことが起こる。そうした実データを営業に見せることで「緊急輸送費や輸送量の平準化などにつながっている」と佐野氏は自信をみせる。

 日立物流は今後も、デジタル事業基盤を活用し「顧客のサプライチェーンマネジメント活動やビジネスそのものを最適化していきたい」(佐野氏)考えだ。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名日立物流
業種物流
地域東京都中央区
課題ECの台頭などで消費構造が変わり荷主の要求も変わってきた。加えてIoT/AIなどのテクノロジーの進展が物流業の装置産業化を加速している。個々の顧客への個別最適な対応ではサプライチェーンの最適化が図れなくなってきた
解決の仕組みサプライチェーンに関する種々のデータを一元的に管理・分析できるデータ基盤を構築し、そこから得られる洞察に基づいて顧客に最適な新サービスを創出する
推進母体/体制日立物流、米インフォマティカ日本法人
活用しているデータ自社や他社3PLの物流関連情報や顧客が持つSCM(サプライチェーン管理)システムの情報など
採用している製品/サービス/技術データマネジメント用パッケージ製品(米インフォマティカ製)など
稼働時期2019年4月にデータ管理基盤の構築プロジェクトを開始