• UseCase
  • 物流

ダイワロジテック、物流センターの自動化でAIベンチャーのABEJAと組む理由

水野 智之(X-Techライター)
2019年12月26日

自動化を進めるも人が担う部分も残す

 人手不足対策を含め物流業における業務改革の代表策が自動化である。秋葉氏は、「物流の自動化は、下流になればなるほど難しい。小口・多品種なうえに消費者のニーズも多様化している。これに対し上流は、パレットやコンベア、マルチシャトルなど自動化が容易な領域が増える」とする。

 ただ、「自動化率は2030年のヨーロッパで40%が見込まれている。日本が約5年遅れているとすれば、自動化率40%になるのは2035年頃になる。人が減っていく中、下流工程は、まだまだ人間がやった方が正確で早いという考え方もある」(秋葉氏)という。

 たとえば、大和ハウス工業が開発したマルチテナント型物流施設に「DPL(ダイワハウス プロジェクト ロジスティクス)流山」がある。国内最大級というDPL流山は、ワンフロアが9000坪。そこには「GPT搬送型ロボットや、新しいタイプのコンベア、自動封函機など各種の最新自動化機器を導入している」(秋葉氏)

 一方で「ある程度、人が作業するプロセスを残している」とも言う。「いきなりすべてを自動化するのは難しいと考えた。やはり柔軟性が必要だ。お客さんもこちらのルールにあわせて業務を変更して頂ける訳だけではない」(秋葉氏)からだ。

 この人が作業するプロセスで大和ハウスが組むのが、AI(人工知能)ベンチャーのABJEA。画像認識技術を活用する。その理由を秋葉氏は、こう説明する。

 「人間は結局、目で見て判断して行動している。音を聞く、触る、あるいは匂いを嗅ぐということもあるが、いずれも副次的ではないか。目から入っている情報は非常に多いだけに、その情報をきちんとデジタル化することの意味が大きい」

 現状、AIの検知率は「98%超」(秋葉氏)。残り1%強については、「撮影した動画をクラウドに上げ、4倍速で東南アジアにいるスタッフが目視でチェックしている。『結局は人か』と言われるかもしれないが、効率的でコストも安価にできている」と秋葉氏は説明する。

デジタルで得た仕組みを他地域・他業態に“コピー”する

 AIによる画像認識のメリットとして秋葉氏は、(1)ディープラーニング(深層学習)のため、画像を読ませれば読ませるほど賢くなる、(2)人間の目では多くの情報を捨てている。だがカメラは情報をすべて記録している。後から抜き出せるし、多くの人が見られるなどを挙げる。

 画像認識による自動化のステップは、ABEJAと議論を重ねている。梱包の工程のほか、さまざまな場所に“目”としてのカメラを取り付けている。秋葉氏は「カメラがあることで変えられる業務は多数ある」と期待する。

 秋葉氏は、デジタル化の特徴として「コピーのしやすさ」も挙げる。「データをどんどん蓄積したほうが活用場面や場所が増えていく。DPL流山で賢くなったAIやデータは、大阪や福岡など別の拠点でも活用できる」(同)からだ。

 同様の考えから、「物流センターでの活用例は、小売店舗でも活用できるのではないかと考えている」と秋葉氏は明かす。「物流センターでモノを動かすことと、小売店舗でモノを動かすことはAIから見れば全く同じこと」(同)だからだ。逆に「小売店舗で精度が上がったAIを物流センターで使うことも可能になる」(同)ともいう。

 秋葉氏は、「情報取得においてカメラはもの凄く有効だ。カメラを設置しておいて、後から使い方を考えても良い。AI活用も100%に満たなければ人がやるという考え方が重要だ」と話す。

 同様の観点から、ロボットの活用についても秋葉氏は、こんな見方を示す。

 「100%を求め、たとえば10kgの荷物を運べなければならない限定すれば産業用ロボットしか使えない。しかし、小口多量化している物流を考えれば個人用ロボットで運ぶ部分があっても良いはずだ」

 秋葉氏は「大和ハウスグループはABEJAと共にロジスティクスを変えたいという志を持っている。志を持つ多くの企業がわれば生産性は、さらに高まっていく。それがデジタルを使う一番の効果ではないだろうか」とし、仲間を求める姿勢をみせた。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名ダイワロジテック
業種物流
地域東京都千代田区(ダイワロジテック本社)
課題物流へのニーズが多様化する一方で労働人口の減少により自動化などを図らなければならない
解決の仕組み画像認識のAI(人工知能)を活用し自動化装置では難しい領域の自動化を図る
推進母体/体制ダイワロジテック、ABEJA
活用しているデータカメラの画像データなど
採用している製品/サービス/技術画像認識のAI(ABEJAが開発)