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ダイワロジテック、物流センターの自動化でAIベンチャーのABEJAと組む理由

水野 智之(X-Techライター)
2019年12月26日

ネットビジネスの拡大と人手不足が重なり大胆な業務改革を迫られる業種の1つが物流業。物流センター構築などを手がける大和ハウス工業も例外ではない。その一環で同社は、AI(人工知能)ベンチャーのABEJAと組み、物流センターの“見える化”に取り組んでいる。グループで物流機能を担うダイワロジテック 取締役の秋葉 淳一 氏が、ABEJAが東京・港区で2019年10月30日に開いたセミナーに登壇し、AIへの期待などを語った。

 「大和ハウスグループは、人々の暮らしを豊かにするための事業に取り組んでいる。その基盤として物流は不可欠な機能だ。物流を強力に支えるためにAI(人工知能)を使うことは今後、必須になっていく」――。

 大和ハウスグループで物流事業を担うダイワロジテックの取締役である秋葉 淳一 氏は、物流事業におけるAIをこう位置付ける。同氏は、物流関連IT サービスを提供するフレームワークスの代表取締役社長でもある。

写真1:ダイワロジテック 取締役 兼 フレームワークス 代表取締役社長の秋葉 淳一 氏

 物流の重要さを疑う人はいないだろう。だが秋葉氏は「まだまだ単なるコストだと思っている人が多いようだ」と指摘する。経営資源として“人・物・金・情報”が挙げられて久しい。だが秋葉氏は、「物流では情報の大事さが改めて高まっている。情報とは『デジタル化されたもの』であり、デジタル化が今日のキーワードになっている」(秋葉氏)と説明する。

人口減少下での経営は誰も経験していない

 物流業においても、情報は重要な経営資源の1つだと認識されている。だが秋葉氏は、「情報が十分に取得されていない。取得すれば活用効果が高いとは分かっていても、そのための投資ができていないのが実態だ」と話す。そこに人口減少に伴う労働人口減少が重なり、課題を大きくしているという。

 その背景には、これまで日本企業は人口増の環境下でしか経営をした経験がないことがある。人口が増え消費が伸びれば市場が拡大するために投資効果を計りやすい。だが人口減少下では「誰も経験がなく、誰かの真似をした経営ができなければ、選択した結果が正しいのかの判断もすぐには分からないため、過去になく難しい選択を迫られている」(秋葉氏)のが実状だ。

 加えて、学生が就職したい業種ランキングなどでは物流は下位に甘んじている。減少する労働者の中から物流業に進もうという若手が生まれにくい状況がある。秋葉氏は「学校などで物流をアピールしても、なかなか効果が現れない」と明かす。にもかかわらず、オムニチャネルに代表されるように商品/サービスの買い方や選び方は多様化が進んでいる。

 物流(ロジスティクス)の起源は軍事用語にある。秋葉氏は、「戦略的に取り組むには、情報をどう使うかが重要になる。今の時代で言えば、デジタルデータをどう生かすかが問われている」とみる。

 たとえば5G(第5世代)通信により大量データを今以上に活用できるようになるのは2023年とされる。しかし、「5Gインフラができあがってからではなく、今から、その活用を考えておく必要がある」と秋葉氏は語る。「米Amazon.com等を含めた遅配のニュースが出てきたのは2~3年前のこと。それを契機に物流業界が今一度、見直されてきた。だが、その課題に今から取り組むとすれば2〜3年遅れた段階からのスタートになる」(秋葉氏)からだ。

 また物流業界では今、人件費が毎年3%近く上昇している。利益率が数パーセントの業態においては、非常に大きな割合を占める。結果「新たな投資をしようと思っても十分な資金を確保できない。こうしたことも踏まえれば、物流業界に残された時間は、それほどない」と秋葉氏は強調する。