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ファミリーマートのDX戦略、「ファミペイ」のデータ基盤から広告と金融の新事業を生み出す

「DOORS -BrainPad DX Conference-」セッションより

DIGITAL X 編集部
2020年4月3日

ファミペイで目指すのは「お財布レス」

 そんなファミリーマートがDXの中核に据えるのがQRコード決済の「ファミペイ」だ。ただ目指すのは単なるキャッシュレスではないという。植野氏は、「クーポンやスタンプカード、コーヒーの回数券、電子レシートなどもまとめ店頭でお財布を出す必要がない“お財布レス”を目指す」と話す。

 ファミペイは、競合ひしめくなか「準備期間8カ月」(植野氏)でサービスを開始した。しかも決済サービス基盤は自社で構築している。「基盤で得られたビッグデータを元に広告マーケティングと金融という新規事業を進めるのがファミリーマートのDX戦略の目標」(同)だからだ。

 ファミペイのシステム基盤は、既存システムとの連携のためにウォーターフォール型で開発されている。植野氏は、「開発時は、アプリのフォントサイズを確認するために、パワーポイントで作ったアプリ画面をスマートフォンで撮影し、その写真で確認するなどアナログな対応もあった。アジャイルで開発できる会社は大変うらやましい」と開発環境の実際を打ち明ける。

 QRコード決済として後発だったためキャンペーンも強化した。ゆるキャラを作り、88億円の大型キャンペーンや、テレビCM、YouTuberによる動画で宣伝した。加えて、「コンビニの最大チャネルはリアルの店舗」(植野氏)として、1万6500あるファミリーマートの店頭をファミペイの広告でジャックした。「お手洗いにまでQRコードを貼った」(植野氏)という。

 これだけ徹底して宣伝したファミペイは2019年7月1日、サービスをスタートした。ところが大量アクセスによる通信障害が初日に発生してしまう。「キャンペーン、CMすべてがブーメランになってしまった。勿論SNSも大炎上した」と植野氏は当時を振り返る。

 現場からも、サービスを一旦ストップするのか続けるのかの決断を迫られた。植野氏は「DXの頂きの高さに突き落とされたと感じていた。だが、ここで退いてしまってはファミリマートのDXは5年から10年は遅れてしまう」と考え、サービスの継続を決断した。システム部門の尽力もありサービスは復旧できた。

ファミリーマートだけでは未来の店舗は開発できない

 ファミペイの立ち上げを振り返った植野氏は「競合の多い領域に後発で飛び込むには大変な覚悟がいった。だが何とか形になった。そんなファミリーマートがDXを実現できたのだから、みなさんの会社でもDXは実現できる」と断言する。

 しかも「DXを実現するには、デジタルに詳しいとか、すごい技術を持っている必要はない」(植野氏)ともいう。「DXを外科手術にたとえたが、手術を受けるために心臓や医術に詳しくなる必要はない。それよりも『手術を受けて必ず良くなってみせる』」といった覚悟や『必ず良くしてみせる』という執念が大切だ」と強調する。

 ファミリーマートについて植野氏は「コンビニは実は“空っぽ”のお店。スペースがあるだけとも言える。店頭に並ぶのは、色々な会社の商品やサービスであり、それを支えるソリューションが必要になる。言い換えればファミリーマートだけでDXを進めても、未来の店舗は開発できない」と説明する。

 「ファミリーマートはオープン主義を掲げている。より多くのDXを推進する企業のみなさんと、是非一緒に、これからの店舗を作りたい」と植野氏は呼び掛ける。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名ファミリーマート
業種コンビニエンスストア
地域東京都港区(本社)
課題コンビニエンス事業のさらなる成長を目指したい
解決の仕組みQRコード決済サービス「ファミペイ」を提供し、同サービスのデータ基盤から広告マーケティングや金融の新規事業を生み出す
推進母体/体制ファミリーマート
活用しているデータ「ファミペイ」の利用データなど
採用している製品/サービス/技術QRコード決済、データ分析など
稼働時期2019年7月1日(ファミペイのサービス開始日)