• UseCase
  • 医療・健康

エーザイ、認知症予防に向けたスマホアプリをDeNAと共同で開発

野々下 裕子(ITジャーナリスト)
2020年8月7日

認知症予防にゲームやスポーツのノウハウを活かす

 Easiitアプリの開発では、DeNA(ディー・エヌ・エー)の子会社であるDeSCヘルスケア(以下、DeSC)とタッグを組んでいる。「スマートデバイスを使ったヘルスケアサービスも継続が難しいことも実感しており、エーザイ単体での開発は難しいと考えていた」(内藤氏)ためだ。

 DeSCは2014年からヘルスケア事業を展開し、遺伝子検査や生活習慣病予防アプリなどを提供している。「楽しみながら、健康に。」を掲げ、ゲームやスポーツのノウハウを活かしたサービスを手掛け、生活習慣病予防アプリでは数百万のユーザーを抱える。同社と組んだ理由を内藤氏は「エーザイが持つ医療分野の質の高いデータを活かせると考えた」と説明する。

 DeSCとの業務提携による最初の成果がEasiitアプリになる。ゲーミフィケーションの要素を取り入れ、継続した使用につなげる。DeNA執行役員ヘルスケア事業本部長でDeSCの社長でもある瀬川 翔 氏は、「健康に高い関心がなくても楽しく使い続けるアプリを目指している。食事は写真を撮るだけでカロリーなどを自動で計算して記録できる。iOSのヘルスケアアプリやfitbitのようなウェアラブルデバイスとの連携など、使いやすさを追求する」と説明する。

 アプリで生活習慣を改善できるかどうかは、DeSC が開発する別の健康アプリの検証で「生活習慣病になる割合が2割程度減る」という結果が研究機関より得られているという。習慣や行動のスコアリングに関しては、エーザイが連携する脳の専門医が監修している。今後も、科学的・医療的に妥当であるかを検討しながら改善を続ける。

 さらに、エーザイやDeSCが別途提供するコンテンツから認知症関連情報を選択し提供するほか、2020年9月末にはセルフチェックツールのうKNOWとの連携も予定する。

健康データを介して日常生活と医療をつなぐ

 エーザイの内藤氏は、「製薬企業がデジタルを使うだけで話題になりがちだ。だがデジタルヘルスは、製薬や未病領域にまで対象を拡げている。それらの動きに合わせてアナログとデジタルを組み合わせた取り組みを進める」という。たとえば、アプリによって蓄積された健康データを、個人情報に配慮しながら認知症対策や創薬に役立てるなど、日常生活と医療をブリッジする(図3)。

図3:認知症プラットフォームEasiitは日常生活領域と医療領域との架け橋を目指す。

 正直なところ現時点では、Easiitアプリと既存の健康アプリとの違いは見られない。その点について瀬川氏は、こう語る。

 「ヘルスケアは息の長い取り組みが必要で、いかに使い続けてもらえるかが重要になる。初期段階では健康に関心が高い層を取り込み、2年ぐらいかけて徐々に機能を改善していく。認知症については、まだわかっていないことが多く、予防も難しい。生活者に寄り添いながら難しくなく解決していきたい」

 エーザイとDeNAの両者は「運命共同体として認知症に備える」とそれぞれがコメントする。第一歩であるEasiitアプリが今後、どう機能アップしてくのかに注目したい。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名エーザイ
業種医療・健康
地域東京都文京区(本社)
課題認知症領域で、新薬の開発に加えて、予防につながる社会イノベーションを起こしたい
解決の仕組みデジタル技術を取り込みながら、認知症予防のためのスマホアプリなどで健康データを収集しながら健康領域と医療を結ぶプラットフォームを構築する
推進母体/体制エーザイ、DeSCヘルスケアなど
活用しているデータ歩数や睡眠時間、食事などのライフログ
採用している製品/サービス/技術認知症予防アプリ「Easiitアプリ」(DeSCとの共同開発)、ブレインパフォーマンスのセルフチェックツール「のうKNOW(ノウノウ)」(オーストラリアのCogstateの技術を利用)
稼働時期2020年7月28日(Easiitアプリの初版リリース時期)