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第一三共ら、医療データプラットフォームの実現に向けブロックチェーンを検証

工藤 淳(フリーランスライター)
2020年9月18日

ブロックチェーンの技術的課題を検証

 ブロックチェーン技術はシステムのコア部分を支えている。ブロックチェーンによる機密保持性と拡張性を活かすために、コンソーシアム型のブロックチェーンフレームワーク「Hyperledger Fabric(ハイパーレッジャーファブリック)」を採用している(図4)。

図4:拡張性の高いデータアーキテクチャーを採用

 PoCでは、ブロックチェーンの特性についても実機検証した。具体的にはチェーンコードの一部を改ざんし、条件の自動実行を試した。結果、「期待通り、ブロックチェーンが、その不整合を検知し取引の執行を未然に防いでくれた」と朝生氏は話す(図5)。

図5:不正な改ざんがあるとブロックチェーンが取引を却下することを確認した

アーキテクチャーの一部に障害が起き不正終了したケースの試験でも「サービスに全く影響を与えず完全な情報を維持できることが確認できた」(同)という。

技術検証を終え業務課題の解決へ

 朝生氏は、今回のPoCでは大きく3つの成果が得られたとする(図6)。

図6:PoCでは大きく3つの成果を得た

 1つは、信頼性の高い同意取得の仕組みを構築できたこと。患者自身のプライバシーに配慮した利用を可能にする。2つ目は、拡張性と機密性に配慮したデータアーキテクチャーを開発したこと。将来的に新たな疾病や検査手法の登場にも耐えられると期待する。

 そして3つ目は、極めて高い耐改ざん性や可用性を実現できたことである。朝生氏は「医療データを扱うプラットフォームにふさわしい」と評価する。

 研究会では今後も、医療データプラットフォームの実用化に向けて、次フェーズに向けた検討と研究を重ねていく。「多くの疾病を抱えた患者や、治療に携わる医療関係者にとって新たな価値の創出に取り組んでいきたい」と朝生氏は語る。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名医療データプラットフォーム研究会(幹事は第一三共)
業種開発・製造
地域東京都中央区(第一三共の本社)
課題製薬企業、医療機関、患者が共有できる疾病関連情報の統合プラットフォームを実現したい
解決の仕組みブロックチェーン技術を使って、改ざん性や可用性、セキュリティを高めることで実用化を図る
推進母体/体制医療データプラットフォーム研究会、日本IBM
活用しているデータ患者の疾患データや試験条項などの医療関係データ
採用している製品/サービス/技術ブロックチェーン「Hyperledger Fabric」
稼働時期2020年2月(PoCの終了時期。実用化に向けた開発を継続中)