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第一三共ら、医療データプラットフォームの実現に向けブロックチェーンを検証

工藤 淳(フリーランスライター)
2020年9月18日

疾病情報を管理・共有するための「医療データプラットフォーム」の構築に、第一三共が幹事を務める研究会が取り組んでいる。利便性とセキュリティの両立を図るためにブロックチェーン技術を採用する。第一三共DX推進本部 DX企画部 デジタルイノベーショングループ 課長代理の朝生 祐介 氏が、2020年9月3日に開催された「Think Summit Japan」(主催:日本IBM)に登壇し、これまでに実施したPoC(概念検証)の結果などについて説明した。

 患者や医療機関が疾病に関する情報を共有するための「医療データプラットフォーム」の構築に取り組むのは、国内製薬企業や医療機関など合計22機関が参加する「Healthcare Blockchain Collaboration」コンソーシアムを母体とした「医療データプラットフォーム研究会」。同研究会には、製薬企業5社のほか関係自治体や医療機関など合計19機関が参加。第一三共が幹事を務める(図1)。

図1:「Healthcare Blockchain Collaboration」における「医療データプラットフォーム研究会」の位置付け。第一三共が幹事を務める

17候補から「疾病レジストリプラットフォーム」を選定

 医療データプラットフォーム研究会は、日本IBMから技術面でのサポートを受けながら、この2020年2月までにPoC(概念検証)を実施した。プラットフォームとしての安定性や信頼性、セキュリティ機能の有用性などの検証が目的だ。

 PoCの対象になったのは、さまざまな疾病データを登録・活用するための「疾患レジストリプラットフォーム」である。17件あったPoC候補中から選定した。

 疾病情報は、製薬企業が、医薬品の臨床研究や治験を行う際に重要な医療データソースである。だが、これまでは病院や疾患団体それぞれが管理しており、統合的かつ横断的に利用できないこと長年の課題になっていた。

 第一三共 DX推進本部 DX企画部 デジタルイノベーショングループ 課長代理の朝生 祐介 氏は、プラットフォームの意義をこう説明する。

 「疾病情報をブロックチェーンによって非中央集権的に一元集約できれば、関係者すべてに有益なプラットフォームが実現できる。そこに、患者や医療機関が情報を登録すれば、新薬開発が加速あい医療全体の質の向上につながる。患者にも治験の参加機会が増える」(図2)

図2:「医療データプラットフォーム」への期待

 PoCにおけるプロトタイプ開発では、日本IBMがブロックチェーンをはじめとした技術支援を提供した。実際のシステム開発では、神奈川県政策局や神奈川県立がんセンターなどの専門家の協力も仰いだ。

 開発にあたって重視したのは、「高信頼でセキュアなことはもちろん、プラットフォームを利用するすべての人にとっての使いやすさ」(朝生氏)である。たとえばユーザーインタフェースでは、医療機関用と製薬企業用、患者用のそれぞれを開発した(図3)。

図3:医療機関用、製薬企業用、患者用のユーザーインタフェースを開発

 医療機関用は、疾患データの登録などがブラウザから行える。製薬企業用では、試験条項や疾患データなどの検索性に重点を置いた。そして患者用は、誰にもわかりやすく手軽に使えるよう、スマートフォンアプリとして開発した。