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セブン-イレブン、不確実な時代が求める統制と柔軟性の両立に向け次世代データ基盤「セブンCENTRAL」を構築

指田 昌夫(フリーランス ライター)
2020年10月2日

データアクセスのためのAPIを統一

 もう1つの方針が、データ基盤からデータを取り出す際のAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)を、グーグルが提供する「apigee」に統一することだ。接続時の認証方式やAPIの管理を一元化することで、運用段階でのシステムの乱立を防ぐのが目的である。

 「APIは例外なくapigeeを用いて統合的に管理している。これにより、セキュリティと開発スピードの両立を図っている」(西村氏)。ただし、ここでも将来の拡張も含めて自由度は確保している。

 西村氏は「従来のシステム開発は“ワンフォーマット”で画一的な方針で動いてきた。だが今後は、いろいろな意味で多様化していくと考えている。システム的に言えば、データ量がどんどん増えるなか、それを瞬時に取り出していけるどうかがポイントになる。IT部門としても、その準備をしていかなければいけない」と語る(図2)。

図2:2つの方針を守る「セブンCENTRAL」の位置付け

 セブンCENTRALの開発において西村氏のチームは、もう1つのテーマに挑戦している。「システム開発におけるベンダー依存からの脱却」(西村氏)である。システムの仕様に統一感と柔軟性のメリハリを持たせながら統制を効かせるためには、ベンダー任せでなく、IT部門が開発と運用をリードする必要があるからだ。

 西村氏は、「自分たちが入り込んで開発していくことで、IT部門の想いがシステムに直接込められることを目指している。これは大きな挑戦だ」と力を込める。

 もちろん、すべてがセブン-イレブン社内で完結できるわけではない。今回、GCPの開発パートナー企業であるクラウドエースをセブン-イレブンとしては初めて起用し、共同で開発にあたっている。

「現地・現物・現場」を統合するデータ基板に

 今後は、さらなるデータの統合を目指していく。統合の範囲についてセブン-イレブン社内では「現地・現物・現場」という言葉をよく使うという。

 「現地」のデータとしては、GCP上に構築している災害対策システム「セブンVIEW」を拡張し、総合的なGIS(地図情報システム)基盤にしていく考えだ。現地の立地や商圏情報をつなぐことで、販売状況と店舗環境を立体的に把握できるようにする。

 「現物」は、すでに格納しているPOSデータだ。そして「現場」の情報は、SFA(営業支援システム)のSalesforce.comなどに入力してきた顧客情報の活用である。店頭の業務ノウハウを集約し、次世代店舗を開発するためのデータ基盤として活用する。

 セブンCENTRALを今後は、「現地、現物、現場」の3つのデータを集約する基盤に成長させていく。「このようなデータ基盤は、これまで存在しなかった。セブンCENTRALに情報を集約することで、次世代のデジタルツールを開発していきたい」と西村氏は意気込む。

 そのために今後は、個人情報などセンシティブなデータの格納と利用も必要になると予想する。データ量の拡大への対応や新機能の投入が続くことになるが、「少なくとも半期ベースで進捗を確認しながら進めていく」(西村氏)計画だ。

 POSデータの活用で、コンビニという業態を確立・拡大してきたセブン-イレブン・ジャパン。セブンCENTRALが稼働したことで、データ基板がもたらす情報力が、新たなコンビニの姿を生み出すかもしれない。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名セブン-イレブン・ジャパン
業種流通・小売り
地域東京都千代田区(本社)
課題各種データの管理システムがサイロ化しており、ビジネス部門のデータ活用・分析ニーズに応えられない
解決の仕組み全社統一の次世代データ基盤を構築し、明確な方針をもって成長させていく
推進母体/体制セブン-イレブン・ジャパン、グーグル・ジャパン、クラウドエース
活用しているデータ2万1000店舗のPOSデータ、災害対策システム「セブンVIEW」が持つ地域データ、営業支援システムが持つ顧客データ、基幹システムのデータなど
採用している製品/サービス/技術クラウド「GCP(Google Cloud Platform)」(米Google製)