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富士通が自身のDXプロジェクト「FUJITRA」を始動、システム投資は1000億円超

指田 昌夫(フリーランス ライター)
2020年10月16日

富士通は、自らのDX(デジタルトランスフォーメーション)プロジェクト「FUJITRA(フジトラ)」の開始を2020年10月5日に発表した。2019年10月に自らCDXO(最高デジタル変革責任者)兼務を宣言した時田 隆仁 代表取締役社長と、2020年4月にSAPジャパン社長から移籍した福田 譲 執行役員常務CIO兼 CDXO補佐の2人がリーダーシップを執り、トップダウンで実行する。

 「新型コロナによって世界中で新しいイノベーションが起きている。富士通も、そのイノベーションの中心にいたい。そのために、富士通自身が変わることを世界に示していきたい」——。富士通の時田 隆仁 代表取締役社長 兼 CDXO(最高デジタル変革責任者)は、デジタル時代への対応を急ぐ富士通自身の社内改革プロジェクト「FUJITRA(フジトラ)」について、こう意気込む。

写真1:富士通の時田 隆仁 代表取締役社長

 FUJITRAは2020年7月に社内でキックオフし、この10月から第1実行フェーズに入っている。今後は各テーマの課題を3カ月単位でレビューして解決策を探り、必要に応じて優先順位を変更したり軌道修正したりしながらすすめていく。

 推進に向けては、DX(デジタルトランスフォーメーション)の定義を全社で統一することも重要だとして、経済産業省のDXの定義に準じ、「デジタルによるビジネスモデル、業務プロセスや企業風土の変革を果たし、競争有利を獲得すること」を目指す。

 FUJITRAの推進ポイントについて、時田氏を補佐する執行役員常務CIO 兼 CDXO補佐の福田 譲 氏は、(1)経営のリーダーシップによる部門横断の取り組みの推進、(2)現場の力と知恵を集める仕組み、(3)デジタル変革を継続的に行える企業カルチャーを作ることの3点を挙げる。

写真2:福田 譲 執行役員常務CIO兼 CDXO補佐

 福田氏は、プロジェクトの目標を「経産省のDXスコアが現在は1.6。これを3年後に3.5に持っていきたい」とする。3.5という値は、「世界で戦えるDX先進企業」という位置づけだ。

 「DXのプロジェクトが必要ということ自体への憂慮もある。プロジェクトが不要になることがゴールだとも言える。そのためにカルチャーの変革にフォーカスしていく」(福田氏)ともいう。

現場部門のDX責任者に権限を委譲

 FUJITRAのプロジェクト体制を示したのが図1だ。この中で重要なポジションになるのが、全社の事業部門から選出されたDXO(部門DX Officer)である。国内15部門、海外5リージョンから計17人が任命されている。

図1:FUJITRAのプロジェクト体制

 DXOは、各部門の担当役員が直接任命し、部門長に代わってDXを推進する権限を持つ。同時に、全社プロジェクトの方針・活動を自部門に伝え、リードする責任も持っている。既存のビジネス経路に依存しない非連続な打ち手を出せるよう、社外の有識者(社外コンサル、パートナー、アカデミア)が客観的な立場からDXOに示唆・支援を提供する枠組みも構築した。

 プロジェクトの事務局はCEO直下に設けられ、現場部門出身の専従者8人と兼務14人が運営する。これら22人は「DXデザイナー」と名付けられている。現場と経営トップとの情報共有や、部門DXO間のつながりを支援する役割を担う。

 FUJITRAの推進においては「すでに世の中に存在し、評価が高いものは徹底的に活用する」と福田氏は言う。具体的には「デザイン思考、アジャイル開発、データサイエンスなどだ。これら3つは“デジタル時代の読み書きそろばん”であり、全社員にこれらの方法論の浸透を図る」(同)考えだ。