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第一生命、バックオフィスに加え顧客接点の自動化にもRPAを適用へ

指田 昌夫(フリーランス ライター)
2020年11月4日

顧客接点へのRPA適用では“止まらない”がよい重要に

 顧客接点に適用する際の課題は、「サービスの安定稼働にある」と排田氏は指摘する。「RPAの運用では、何か問題が発生すると処理がその場で中断してしまう。バックオフィスの自動処理プロセスであれば、中断しても対策を打ち再起動すれば問題ない。だが顧客に直接サービスを提供する場面では、サービス低下に直結する。それだけに、できる限り止まらないように設計する必要がある」(同)からだ。

 適用範囲の拡大に向けて第一生命は、Blue Prismが2020年11月にリリースを予定するクラウドサービスに期待する。そこでは大きく3つのポイントを挙げる(図3)。

図3:第一生命がRPAのクラウドサービスに期待する3つのポイント

 1つは、人とRPAの協業モデルへの移行である。例えば、人の判断をトリガーにRPAが業務処理を実行するなど、人とRPAが同時に業務にあたる組織の実現を目指している。

 2つ目は運用の効率化だ。RPAのロボットの稼働率はすでにKPI(重要業績評価指標)に組み入れているが、24時間無駄なくロボットが動き続けられるように、稼働スケジュールの管理を強化したい考えだ。

 「サーバー型RPAは、1ロボット当たりの導入・運用コストが高額だと言われている。だが、効率よく運用できれば高いとは思わない。Blue Prismでは、このスケジュール管理機能が充実していることも評価している」(排田氏)という。

 3つ目は、RPAのエコシステムの構築である。PRAの能力を拡張するため、他のサービスと連携し「デジタルワークフォースを成長させていくためのサービスを素早く導入していきたい」と排田氏は話す。

大組織の成長を止めないプロセス自動化が重要

 第一生命が採用するBlue Prismは、英バークレイズ銀行の業務効率を高めるために2000年に開発された自動処理プログラムをルーツに持つ。当初はデスクトップ型だったが、2005年にアーキテクチャーを変更し、エンタープライズ型またはサーバー型のRPAに生まれ変わった。デスクトップ型では、利用範囲が拡大するにつれてプログラムがサイロ化し運用に支障をきたしたためだ。

 エンタープライズ型の特徴をBlue Prism Japan社長の長谷 太志 氏は、「導入が進むAIを活用したアプリケーションなどは、AIの進化に合わせたバージョンアップも頻繁に行われる。デスクトップ型では、ロボット1体1体がバージョンアップに対応しなければならず、適用範囲が広ければ広いほど運用負荷が増す。エンタープライズ型は、業務プロセスをロボットが参照しながら稼働しているため、全ロボットがバージョンアップに対応しながら業務を続けられる」と話す。

 業務アプリケーションの変化に合わせてロボットの稼働が維持できれば、業務効率化が計画通りに進むため、いわゆる「野良ロボット」も生まれない。自動化プロセスの対象を広げつつ、アプリケーションの変化にも追従できる運用段階の自動化についても留意すべき、というのがBlue Prismの主張である。

 その延長で2020年11月から、クラウドサービス「Blue Prism Cloud」の国内提供を開始する。Blue Prism Japan CTO 兼 製品戦略本部長の小林伸睦氏は、「Blue Prism Cloudは、「RPAのテクノロジーとエコシステム、これまで10年以上培ってきた業務自動化のノウハウを集めた方法論をクラウドとして提供する。顧客企業は、より短期間にRPAを導入し運用できることがメリットだ」と語る。

 Blue Prism Cloudは、マイクロソフトのクラウドサービス「Microsoft Azure」上で稼働する。マイクロソフトのコグニティブサービス(AI)が標準装備されるほか、各種クラウドサービスとの連携も容易になる。

 連携の容易さを生かし、パートナー企業がBlue Prismに運用ノウハウやセキュリティ、AIなどを組み合わせて提供できるよう「Digital Worker as-a-Service」というパートナー施策も開始した。経費精算やOCR、データ分析、マネージドサービスと組み合わせたサービスが提供される予定である。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名第一生命保険
業種金融・保険
地域東京都千代田区(本店)
課題業務プロセスの効率を高め競争力につなげたい
解決の仕組みバックオフィス業務の顧客接点業務のそれぞれにRPA(ロボティックプロセスオートメーション)を適用する
推進母体/体制第一生命保険、英Blue Prism
活用しているデータ業務プロセス関連データ、顧客からの問い合わせデータなど
採用している製品/サービス/技術RPA「Blue Prism」(英Blue Prism製)
稼働時期2016年(RPA導入プロジェクトの開始時期)