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青森市、ヘルステックを核とした健康まちづくりをフィリップスと推進

野々下 裕子(ITジャーナリスト)
2020年11月25日

青森市が医療のデジタル化による未来のまちづくりに取り組む。「予防の取り組みへのモビリティ活用」と「みまもりIoTの活用」をテーマに、超高齢社会を迎える地域市民の健康寿命を延伸する事業を確立するのが目的だ。そのためにフィリップス・ジャパンと「ヘルステックを核とした健康まちづくり連携協定」を締結。推進母体になる「あおもりヘルステックコンソーシアム」を設置した。

 青森市役所で2020年10月7日、「あおもりヘルステックコンソーシアム」のキックオフイベントが開催された。当初、2020年3月を予定していたが、コロナ禍により延期されていた。

 同コンソーシアムは、青森市浪岡地区をモデル地区において市民の健康寿命の延伸を目指す「ヘルステックを核とした健康まちづくりプロジェクト」の推進母体である。

青森モデルを全国、世界に届ける

 同プロジェクトを開始するに当たり青森市は、フィリップス・ジャパンと2019年2月6日に連携協定を締結。地域医療を支える市立浪岡病院の建替えに合わせて、浪岡地区で地域包括ケアに取り組むための基盤を、ヘルステック分野で実績があるフィリップスと提携して構築する。

 高齢化が深刻な青森では、医療施設や医療従事者が不足し、医療費も肥大している。その中で、青森県南部にある浪岡地区は、高齢化率や人口密度が全国水準と同じで、健康課題を深く分析できることなどから、今回のプロジェクトのモデル地区に選ばれた。ただ検診率は全国平均よりも低く、プロジェクトでは検診率を全国トップにすることを目標を掲げる。

 青森市の小野寺 晃彦 市長は、「住み慣れた土地で、バランスの取れた医療や、健康サービスを提供するソリューションを市民や全国民に届けるのが本プロジェクトの肝だ」と述べる(写真1)。

写真1:青森市の小野寺 晃彦 市長

 フィリップス・ジャパン代表取締役社長の堤 浩幸 氏は、「コンソーシアムに参加する企業と共に取り組み自体が自走可能な事業モデルになることを目指す」と話す(写真2)。「青森モデルの構築は地方創生に貢献するだけでなく、今後世界でも進む高齢化社会に向けた新しいモデルとしてグローバルに展開できるものになると期待している」(同)ともいう。

写真2:フィリップス・ジャパン代表取締役社長の堤 浩幸 氏

ヘルスチェク用MaaSを導入

 コンソーシアムが推進するプロジェクトの核となるのは、「モビリティを活用した予防サービス」と「IoTを活用したMy守り(みまもり)サービス」の2つ。

 まずモビリティを活用した予防サービスでは、要介護手前のフレイル状態にある高齢者や働き盛りの生活習慣病を対象に、簡易なヘルスチェックと予防プログラムを提供する(図1)。

図1:モビリティを活用した予防サービスのイメージ

 その際に、看護師や管理栄養士を乗せたモビリティを活用し、さまざまな場所でヘルスチェックなどを実施できるMaaS(Mobility as a Service)を活用するのが特徴だ。

 車両はトヨタ車体が開発し、青森トヨペットの店舗も利用しながら2021年4月から本格的なサービス開始を予定する。トヨタ車体 開発本部領域長の石川 拓生氏は車両について「安心、気軽に利用できる車両というコンセプトに合わせ、安全に乗り降りできるだけでなく、利用者にとって快適で居心地の良い車内にした」と説明する。

 プロジェクトには、トヨタ車体、青森トヨペットのほか、栄養アドバイスでネスレ日本が、身体的フレイルと認知機能の予防で損害保険ジャパンが、サービスで利用するアプリケーション開発でカゴメとインテグリティ・ヘルスケアが、それぞれの得意分野を活かし参画する。

 利用するアプリ「ベジチェック」は、手のひらをセンサーにかざすだけで野菜の摂取量を独自のアルゴリズムによって測定する。カゴメの執行役員 健康事業部長 兼 女性活躍推進担当である曽根 智子 氏は、「状態を可視化することで食生活を改善するきっかけにつながる。手軽に利用できるのでぜひ試してみてほしい」(曽根氏)と話す。