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ダイキン工業の「オールコネクテッド戦略」、IoTの活用方針を大転換

岡崎 勝己(ITジャーナリスト)
2021年6月1日

空調世界最大手のダイキン工業が「オールコネクテッド戦略」を推進する。顧客との関係強化や新たな価値創出を目標に、業務用エアコンの制御/運転データなどネットワーク経由でクラウド環境に集約し活用する。2021年5月19日に開かれた記者説明会で、その狙いと仕組みを実現するための取り組みが説明された。

 ダイキン工業が2021年6月1日から、クラウド型の空調コントロールサービス「DK-CONNECT」を開始する。中・大規模の事業拠点における空調設備の運転確認や操作、制御などの管理業務を一括で支援する。そのために、エアコンや換気装置、照明、CO2センサー、外気湿度センサーなどのデータを収集・管理するための基盤と、各種の空調用アプリケーションを包括的に提供する。

 DK-CONNECTでは、各種デバイスを専用のネットワーク端末「DK-CONNECT edge」を介して接続する(図1)。ネットワークやクラウドに障害が発生した時には、DK-CONNECT edgeがデータを保管・管理することでデータの安全性を担保する。DK-CONNECTのサービス利用料は、通信料金込みで月額3000円(税別、以下同)、DK-CONNECT edgeの価格は39万円だ。

図1:「DK-CONNECT」では、各種機器を専用ネットワーク端末「DK-CONNECT edge」を介して接続しデータの安全性を担保する

ダイキンによる空調制御を顧客による空調制御の支援に切り替え

 ダイキン工業は業務用エアコンで約4割の国内シェアを握る。IoT(Internet of Things:モノのインターネット)についても、そのキーワードが今ほど話題になる以前から、その活用を進めてきた。

 1993年に開始した「エアネットサービスシステム」がそれだ。業務用空調機の運転データ(温度、圧力、運転時間など)をオンラインで収集し24時間監視するサービスである。気象データと組み合わせたエアコンの自動省エネ制御や、独自ロジックによる異常の事前検出などを可能にしてきた。

 ただ国内の業務用エアコン市場は、約8割を更新需要が占める。さらに新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で、ホテルや工場などの需要が大きく落ち込んだ。一方で、COVID-19や脱炭素などの新たな課題に対し、これまでの快適性や省エネ性に加え、換気による作業現場の生産性向上や、部屋単位での空調運用への支援を求める顧客の声も高まっている。

 そうした市場変化を捉え、新規顧客の獲得と更新需要の喚起に取り組むのが、ダイキンの「オールコネクテッド戦略」であり、その中核サービスになるのがDK-CONNECTである。

 そこではIoTの活用目的も、「自社での空調機器の制御」から「顧客の空調制御の支援」に切り替える。従来の運用・保守だけでなく、提案から施工、更新までを含めた空調のバリューチェーン全体を対象に新たな価値創出に取り組み、売上拡大を目指す。

 同社 常務執行役員 空調営業本部長の舩田 聡 氏は、オールコネクテッド戦略への意気込みをこう語る。

 「当社は従来、営業と保守が個別に動き、顧客への一貫対応に不十分な面があった。サービス保守の契約率が低く、(管理会社が間に入るために)顧客接点も限られていた。オールコネクテッド戦略では、データを基にバリューチェーン上にある企業の動きを把握し、直接契約により得られる顧客接点に対し、より広範なサービスを提案できる。DK-CONNECTは、今後のソリューション事業の足掛かりになる取り組みだ」

写真1:ダイキン工業 常務執行役員 空調営業本部長の舩田 聡 氏