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カゴメ、トマトの生産を支援する農業ICT基盤のグローバル対応機能を強化

DIGITAL X 編集部
2021年6月24日

カゴメは、トマトの生産をデータに基づいて支援するための農業ICTプラットフォーム「CropScope」の機能を強化し、グローバルな地域で利用を可能にした。そのために、2019年からのポルトガルに続き、2020年はオーストラリアで実証実験を実施してきた。より広い生産環境下での収穫量の安定化を支援する。共同で事業展開するNECとともに2021年6月7日に発表した。

 カゴメの「CropScope(クロップスコープ)」は、センサーや衛星写真などのデータを使ってマトの生育状況や、土壌の状態を可視化するサービス。AI(人工知能)技術を使って生産方法に対する「AI営農アドバイス」のサービスも提供する。熟練栽培者のノウハウをAI技術で形式知化することで、水や肥料の最適な量と投入時期の指示や、熟練者の技術継承を可能にし、収穫量の安定化と栽培コストの低減を図る(図1)。

図1:「CropScope」を適用したトマトのほ場(左)と、「AI営農アドバイス」による土壌の水分の傾向や今後の予測に基づく示唆の例

 2021年4月、CropScopeにおけるAI営農アドバイスの汎用性を強化するとともに、世界各国の大規模生産事業者のニーズに対応するための機能強化を図った。

 AI営農アドバイスの汎用性では、2020年からオーストラリアでの実証試験を実施し、地下灌漑における土壌水分シミュレーションや、オーストラリアの熟練栽培者のデータを学習することで分析手法などを強化した。これまでのアドバイスは2019年からのポルトガルでの実証試験に基づいたサービスだった。

 北半球にあるポルトガルと南半球にあるオーストラリアでは、土壌や品種、灌漑設備などトマトの栽培条件が異なる。今回の強化で、北半球から南半球までの環境が異なる状況下でも熟練栽培者と同等のトマトの収穫量を実現できるようになったとしている。

 機能面の強化では、(1)土壌の水分変化など、ほ場の異常を通知する機能、(2)営農判断の優先順位を、ほ場ごとにリスト化しシンプルに可視化する機能、(3)蓄積したデータを営農改善や振り返りに活用する、ほ場比較分析機能などを搭載した(図2)。

図2:土壌の水分変化などを通知する画面の例(左)とほ場間のデータを比較分析する画面の例

 カゴメはCropScopeを、主に欧州や米州などのトマトの一次加工品メーカーや生産法人に向けた提案を強化し、新規顧客の拡大を図る(図3)。CropScopeでは生産現場での産地の拡大や新規就農者の支援などに加え、自社および契約農家のトマトの生育状況を網羅的に把握する機能によって、データに基づく収穫調整により生産性の向上が図れる点をアピールする。

図3:「CropScope」のビジネスモデル
デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名カゴメ
業種製造
地域名古屋市(本社)
課題トマト農家やトマト一次加工メーカー、生産法人の生産現場の課題を解決することで、トマトの安定供給を図りたい
解決の仕組み農業ICTプラットフォーム「CropScope」のAIシステムを、従来の北半球対応から、南半球対応にまで拡大し、世界各国の生産現場のニーズに応えられるようにする
推進母体/体制カゴメ、NEC
活用しているデータセンサーを活用した土壌水分の情報、衛星写真を活用したトマトの生育状況など
採用している製品/サービス/技術トマトの営農支援サービス「CropScope」(カゴメとNECが共同で開発・事業化)
稼働時期2021年4月(機能強化時期)