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三越伊勢丹、イオンが取り組む小売業のDX、現場主導で成果を引き出す

指田 昌夫(フリーランス ライター)
2021年7月12日

withコロナの時代になり顧客接点の見直しを進める業界の1つが小売業。日本マイクロソフトが2021年6月16日に開いた「小売・消費財業界のDX」に関する記者説明会に、三越伊勢丹とイオンのデジタル関連プロジェクトの推進リーダーが登壇し、それぞれの取り組みを説明した。概要を紹介する。

三越伊勢丹:アナログ的なDXで仮想世界を構築し独自のCXを模索

 三越伊勢丹は2021年3月、仮想都市プラットフォーム「REV WORLDS」のサービスを開始した。同サービスを牽引するのが、三越伊勢丹 MD統括部 オンラインクリエイショングループ デジタル事業運営部 計画推進 仮想都市プラットフォーム事業の仲田 朝彦 氏だ(写真1)。

写真1:越伊勢丹 MD統括部 オンラインクリエイショングループ デジタル事業運営部 計画推進 仮想都市プラットフォーム事業の仲田 朝彦 氏

 仲田氏は2008年、伊勢丹(当時)に入社した。紳士服の販売/バイヤーなどを務める中で「オンライン上に伊勢丹を建てたい」という考えを入社以来、温めてきたという。その実行を長年、社内に働きかけてきたが承認されることはなかった。

 それでも粘り強くアタックを続けた仲田氏は2019年、社内起業制度を利用して計画の承認を得た。「オンライン事業の可能性を経営者に直接プレゼンし、やっと認められた」(仲田氏)。そして2021年度、REV WORLDSとして事業化した。仲田氏は、事業企画・開発責任者として同プラットフォーム事業の拡大を進めている。

 事業に掛ける思いを仲田氏は、「現代社会は、リアルな自分とは別に、オンライン上に、もう一人の自分が存在する時代だと捉えている。小売業は、リアルとオンラインの“2人の自分”という消費者に対し、新しい体験価値の提供が求められている」と話す。

 REV WORLDSの最大のポイントは、スマートフォンでアクセスできる仮想世界であることだ。専用のスマホアプリをインストールした消費者は、VR(Virtual Reality:仮想現実)空間に存在する、もう1人の自分が、アバターとして仮想百貨店を歩き回りながら、店員や友人・知人とコミュニケーションしながらショッピングを体験できる。

 最初の段階では、伊勢丹の旗艦店がある新宿を舞台にした「仮想新宿」を構築している。当初は開発チームである伊勢丹社員が動画サイトの「YouTube」など見ながら、独学でCG(コンピューターグラフィクス)を勉強しVRの世界を作り上げていった。

 「REV WORLDSでは、何でもスマートに買えるサービスとは真逆の、店内をうろうろして思わぬ出会いがあるような世界を作ろうとしている。それを我々は“アナログ的なDX”と呼んでいる。そこには、オンラインコマースでも思い出に残る体験が、きっと作れると考えている」と仲田氏は力を込める。

 そのためアバターの表現には特にこだわった。髪型や声、動作をはじめ、服装や化粧をセットアップでき、「使えば使うほど自分の個性を引き出せる」(仲田氏)という。「VRの世界でも自分らしさを表現できる必要があり、リアルと同じニーズが生まれてくると考えている。そのための機能をデジタルプロダクトで用意している」(同)という(図1)。

図1:伊勢丹の仮想世界「REV WORLDS」におけるアバター用セットアップ用品の例