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北國フィナンシャルHD、アジャイル思考で顧客と銀行のために全力で取り組む

北國銀行 システム部部長 岩間 正樹 氏、「アジャイル経営カンファレンス」から

ANDG CO., LTD.
2022年5月6日

第3段階では「人」を主軸に縦割りを打破へ

 改革の第3段階の主軸に据えたのが「人」だ。世の中の変化に合わるためのリカレント教育として、新しい考え方や技術、知識を学び直す機会の提供に力を入れている。社員がモチベーションを高め自ら成長できるようにキャリア型プロフェッショナル制度も導入した。

 「北國FHDではDXを、単なるデジタライゼーションではなく、組織そのものをデジタルで根本的に変えることだと位置付けている。対話ができる風通しの良い仕組みを作ることで縦割りを打破し、改革スピードを高めて組織としての能力を再構築する。そこにはリカレント教育も欠かせない」(岩間氏)

 社内の風通しをよくするためのツールとして「Microsoft Teams」を活用している。Teamsには頭取も参加しており「顧客の問題解決に向けて全員が忖度なしに意見を交わす」(岩間氏)という。

 頭取から役員、管理職、店長までが参加する経営戦略会議の内容もTeamsを使って全社員に生配信している。「行間も含めて、経営戦略が正確に、かつリアルタイムに現場の隅々にまで浸透さえるのが狙いだ」と岩間氏は説明する。生配信は社員1人ひとりに対し「『ブランドを共有・共感したうえで、同じベクトルで仕事をしていこう』というメッセージにもなっている」(同)という。

 システム障害への対応にもTeamsを使う。障害発生時、起きている事象や対応状況を多くの社員がリアルタイムに書き込むことで状況を共有する。障害状況はホームページを介して顧客にもタイムリーに知らせてもいる。

アジャイル思考でBaaSの提供へ

 北國FHDは現在、システムによるサービスレベルの評価基準(SLO)においては、現金の供給・資金決済に影響があり代替手段がないシステムを最重要システムに位置付け、そこでの目標稼働率を99.95%に設定している(図3)。金融システムのSLOは99.99%が常識とされているにも関わらずだ。

図3:重要度の別にサービスレベルの評価基準(SLO)を設定している

 その理由を岩間氏は、「システム障害を起こさないためには、従来通り、オンプレミスでテストに何カ月もかけて開発すれば、障害発生の確率は減らせるだろう。しかし、それでは顧客に対し利便性を継続的に提供し続けることは難しい」と説明する。

 利便性の継続的な提供に向けて北國銀行が選んだのが、アジャイルに開発できるクラウドを使ったシステム開発である。その決断のきっかけになったのが、「2017年に私を含む数人が東京のパートナー会社へ出向したことだ」と岩間氏は振り返る。インターネットバンキングのクラウド化を目的とした出向先では「国籍が異なる人たちが自由に働き、フラットなコミュニケーションを取るなど、銀行とは全く異なる文化があり衝撃を受けた」(同)という。

 最も大きな衝撃が「開発がうまくいかなかった時の考え方の違い」(岩間氏)だ。銀行業界では誰もが品質もスケジュールもコストも当初の計画通り進まなければ駄目だと思い込んでいた。岩間氏は「大切なのは、銀行にとっての重要事項に優先順位をつけ効率よく進めていくことだと気づかされた」と話す(図4)。そこから北國銀行のアジャイル思考への転換が始まったのだ。

図4:顧客と銀行にとって最も良いことを全力で進めるためにアジャイル思考に転換した

 以後、岩間氏は行内にアジャイル思考を広める活動にも取り組んでいる。就業時間後にTeamsで開いたアジャイル思考の勉強会には、正社員1800人中500人が参加した。自主的な学習会に、これだけ多くの社員が参加したことは、社員へのリカレント教育の定着ぶりやアジャイル思考への関心の高さを表しているといえる。

 北國FHDは金融DXとして複数のプロジェクトを進めてきた。2019年にはシステム子会社としてデジタルバリューを設立し、個人向け金融サービス「北國クラウドバンキング」の提供を開始。2021年には勘定系システムのPaaS(Platform as a Service)化や、新しい金融サービス向けプラットフォーム「BankVision Azure」も稼働させた。

 今後について岩間氏は、「システムをトリガーとした経営戦略の実行と、顧客向けシステムに積極的に投資していく。地域を巻き込んだエコシステムを構築し、銀行の機能をサービス化したBaaS(Banking as a Service)を提供することで、より利便性の高い新たなサービスの創造につなげたい」と語る。