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北國フィナンシャルHD、アジャイル思考で顧客と銀行のために全力で取り組む
北國銀行 システム部部長 岩間 正樹 氏、「アジャイル経営カンファレンス」から
石川県金沢市に本店を置く北國銀行が金融DX(デジタルトランスフォーメーション)への取り組みを加速している。2021年10月には北國フィナンシャルホールディングス(北國FHD)として持株会社制を導入し組織も大きく変更した。北國銀行システム部長の岩間 正樹 氏が、2022年1月21日にオンラインで開かれた「アジャイル経営カンファレンス」(主催:アジャイル経営カンファレンス実行委員会)に登壇し、同行におけるDXへの取り組み況について語った。
「守りの経営では、もはや成長できない」――。北國銀行システム部長の岩間 正樹 氏は、同行がアジャイル経営に踏み切った背景をこう語る。
改革の第1段階で立ち上げた新システム部が金融DXの起点に
2022年1月時点で北國銀行の店舗数は94店舗。しかし改革前、最も店舗数が多かった1997年には155店舗を展開していた。その分、「物件費用や人件費が経営を圧迫していた」(岩間氏)という。90年代中頃からは銀行の収益モデルも変化し、屋台骨だった貸出金による収益が減少し始めていた。資金利益は94年の569億円が2000年には342億円にまで落ち込んだ。
こうした苦境から脱するために北國銀行は様々な改革を断行する。大幅なコスト削減や営業方法の変更、リカレント教育の推進、人事制度の再構築などだ。「トラディショナルな社風を有する地方銀行において、従業員の意識を改革するには、トップダウンでルールを敷いて強く推し進める必要があった」と岩間氏は説明する。
改革の第1段階は2000年に開始した「店舗施策見直しプロジェクト」と「戦略的コスト削減プロジェクト」である。店舗のあり方を見直し、少しずつ店舗数を減らしていった(図1)。「店舗を閉鎖しても顧客の客の利便性が低下しないようデジタル化でカバーした」(岩間氏)という。
社内で使う紙の量を減らす際には、総務管財課が銀行全体での印刷枚数を集計。どの部署の誰が何枚印刷しているかを可視化し毎月明示することを徹底し、社員全員のコスト意識の向上へとつなげた。岩間氏は「コスト意識が1度、全社に定着してしまえば、それが『当たり前』になり周りとのギャップも生じない」と当時を振り返る。年間経費は現在、2000年の358億円を280億〜290億円にまで削減できている。
並行して、2007年に新しいシステム部を立ち上げた。初代システム部長には、現頭取の辻村 修司 氏が就任し、システム開発のあり方を刷新した。「以前は業務部門から依頼されたシステム開発を下請け的にこなすだけのシステム部門だった」(岩間氏)。新しいシステム部は経営企画部門と連携し、「戦略的なシステム投資により“攻めの開発”を進めた」(岩間氏)という。
この新しいシステム部が、2021年10月にスタートした北國フィナンシャルホールディングス(北國FHD)が進める金融DX(デジタルトランスフォーメーション)の起点になっている。
第2段階ではノルマを廃止しプロセス重視の営業スタイルに
2013年頃からは第2段階として営業戦略の改革に踏み出した。切り口は(1)ビジネス領域の開拓と(2)営業のスタイルの見直しの2つである。従来、同行では手つかずだったコンサルティングやカード事業、リース事業など新しいビジネス領域の開拓に力をいれた。
並行して2010年頃からは「ノルマ主義を廃止しプロセス重視の営業スタイルに切り替えた」(岩間氏)。それまでは「ノルマをこなすため、上司に言われるがままに、知人に定期預金契約を依頼して回るなど、自社の商品/サービスの購入を強く働きかける“プッシュ営業”が基本だった」(同)という。
プロセス重視の営業では、顧客の悩みを聞き、それに見あった商品/サービスを提案・提供する(図2)。結果、「社員1人ひとりのモチベーションが高まり『お客様にとってベストなことをやるんだ!』というように意識が変わっていった」と岩間氏は話す。2020年には残高や件数の管理も止めた。