• UseCase
  • 流通・小売り

コープさっぽろ、経営破綻からのV字回復をカイゼン活動で果たす

コープさっぽろ協同組合 理事長 大見 英明 氏、「アジャイル経営カンファレンス」から

ANDG CO., LTD.
2022年5月18日

1998年に経営破綻したコープさっぽろは約23年を経てV字回復を遂げている。どのようにして劇的な事業の立て直しを実現したのか--。その背景にある事業の構造改革とスピード感ある組織づくりについて、同協同組合の理事長である大見 英明 氏が、2022年1月21日に開催された「アジャイル経営カンファレンス」で語った。

 「職員1人ひとりが問題意識を持ってカイゼンを進める組織風土を作れなければ、経営改革などできない」--。コープさっぽろ協同組合の理事長である大見 英明 氏は、こう語る(写真1)。

写真1:コープさっぽろの理事長である大見 英明 氏

 コープさっぽろは1998年、事実上の経営破綻に至った。店舗の大型化、事業の失敗、銀行借入金の依存体質といった内的要因、バブル崩壊、ダイエーや西友、イトーヨーカドーなど大手資本の北海道進出といった外的要因があるなかで、400億円の損失を隠した粉飾決算が大きな痛手となった。その後、大見氏らが改革の旗手となり、組織風土の改革を断行してV字回復を遂げた。

過酷なリストラが残った職員の組織を変えた

 V字回復に向けて、経営を引き継いだ内館理事長が取り組んだのは、不採算店舗の閉店だ。小型で老朽化した不採算店43店の物件を契約解除し、その後4年間でさらに63店舗を閉店し合計112店舗を閉めた。並行して、家庭用品や家電・家具、衣料品など不採算部門からの撤退、旅行やホテル経営といった不採算事業の切り離しなど、事業を徹底して見直した。

 その過程で最も過酷だったのが人員整理である。希望退職を募り、2500人いた職員のうち450人が退職した。一般に希望退職者には退職金を割り増すが、コープさっぽろのケースでは逆に「1999年2月までに退職しなければ、退職金を半分にカットする」という厳しいものだった。その退職金も「組織に残る職員の給与をカットして充てざるを得なかった」(大見氏)。翌年はさらに1000人のパート職員が退職した。

 内舘理事長は「残るのも地獄・去るのも地獄」という言葉を残している。これについて大見氏は「リストラが組織改革の礎を作ったのだと思う。残った職員に『コープさっぽろを存続させよう』という決意をさせ、再建への舞台を作ったのだ」と当時を振り返る。

能力主義の導入でパートから店長になる従業員も

 人員削減に続いて始めたのが、業績によって人を評価する能力主義人事制度だ。コープさっぽろはそれまで「横並びでみんないっしょ」が基本で「能力主義とは縁遠い世界だった」(大見氏)。しかし、1999年には能力主義をスタートさせ、店舗業務にそぐわない職員を宅配事業への加入を促す部隊に集約もした。専任部隊には約200人を投入したという。

 さらに、職員を3つのランクに分ける人事考課制度も導入した。同制度は、上位15%の職員を「A」ランクに、70%の職員を「B」ランクに、下位15%の職員を「C」ランクに分け、Cランクの職員は降格させるというものである。この仕組みにより、パートから小型店の店長に昇格した例もある。大見氏は「能力主義を導入して分かったのは、給与が下がったくらいで人は簡単に辞めないということ。自分の役割、存在理由を見出せれば人は決して辞めない」と強調する。