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米タペストリー、DX戦略の柱は「生産性」と「顧客」そして「人材」の3つ
タペストリー・ジャパン VP, Head of International IT 杉林 隆彦 氏
顧客:Z世代に向けUGCで店舗の在り方を変える
コロナ禍での顧客対応として、タペストリーはデジタルチャネルの活用に力をいれている。新たな顧客接点として、ライブストリーミングによる販促も実施している。「消費者の高揚感を高め購買につなげられる策として今後、一般化するはずだ」(杉林氏)と、その手ごたえを感じている。
その中で、特に大きな期待を寄せるのが、2000年前後に生まれ“デジタルネイティブ”と評される「Z世代」のファン獲得に向けた「UGC(User Generated Content:ユーザー自身が制作・生成したコンテンツ)」の活用である(図2)。「デジタルチャネルの弱点は、色やサイズなどを現物として確認できないこと。ユーザー自身の意見であるUGCは、その弱点を打ち消す有力材料になる」(杉林氏)からだ。
UGCとしては、ユーザー自身に加え、Z世代の関心が高い同社店舗に勤め、フォロワー数も多いスタッフによる作成も考える。杉林氏は、「Z世代への売上増だけでなく、コロナ禍で一度は実店舗から離脱した顧客の回帰、店舗スタッフのモチベーションの向上、さらには実店舗をバーチャル化する手段としても強力な武器になる」とみる。
ただZ世代を満足させるには、UGCだけでは不十分だとも考える。「PWA(Progressive Web Apps)」などWebページやWebアプリケーションをスマートフォン用アプリケーションのように利用する技術の導入も視野に入れる。「PWAの利用方法については、国内ではアイデアが煮詰まっているのが実態だろう。いち早く差別化を図るには、海外の動向に絶えずアンテナを張っておく必要がある」と杉林氏は指摘する。
チーム:後継者を育成するために“悩む姿”も見せる
さまざまなデジタル技術活用に取り組むタペストリー。だが杉林氏は、「デジタル技術活用を推進するための組織は人があってこそ成立する。その観点から、人を重視した人材育成やチーム作りに重きを置いている」強調する。
特に重要性を訴えるのが、子供の頃からデジタルに触れ自身で学び理解する能力を養えるSTEM(Science、Technology、Engineering、Mathematics)教育と英語教育である。「デジタルの理解はIT部門として不可欠だ。加えてグローバル化が進む中では、同僚が日本人であり続けるとは限らず英語も必須になる」(杉林氏)と考えるからだ。
自身がタペストリーで多文化に触れている杉林氏は、「例えば日本では“普通”のサービスも、世界的に異常なまでに高品質だったりするなど、サービス品質を検討する際の新たな視座が得られる」と話す。
システムの開発・運用手法も、「よりアジャイルに見直すべきだ」(杉林氏)と指摘する。「まずはやってみて、不都合があれば、その見直しを繰り返すほうが、最後になって大きなバグが判明するより、よほど良い。そのためにはむろん、組織の構造も、迅速な判断ができるようフラットになる必要がある」(同)とする。
しかし人材育成は難しい。杉林氏自身、「優秀な人材であっても、組織の期待に応え切れなかったというケースは時代を問わず散見された」と振り返る。
その杉林氏は、「だからこそ、自身の悩む姿を部下に見せてほしい。そこから段階的に判断を任せ『失敗しても次に生かせる』との考えをチームに根付かせる。それが後継者を育成し、チームも強くするポスト継承のあり方だと考える」と訴える。
その意味で杉林氏は、「CIOの『I』は、『Information』だけでなく、『Innovation』『Idea』『Invest』、さらには『Inspiration』と『Influence』の『I』でもある。それだけの役割を果たしていかなければならない」と改めて強調した。