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大和ハウス、BIMデータを核にしたデータドリブン経営へのシフトを急ぐ
「Autodesk University 2022」での事例講演より
施工現場の作業もBIMデータで可視化
コマンドルームの仕組みは、現場レベルでも有効かどうかの検証も始めている。設計時のBIMデータと建設現場で収集したデータを扱う「ミニコマンドルーム」が、それだ。「工事現場をデータドリブン型で管理するための場所」(宮内氏)になる。
ミニコマンドルームを先取る形で実施した実証例に、施工現場へのBIMを使った3Dモデルの導入がある。図面データの共有・管理ソフトウェア「BIM 360」(米Autodesk製)を使い、従来の平面(2次元)図面を3Dモデルに切り替え、設計モデルを3Dで構築・再現する。東京本店 流通店舗事業部 第二事業部 工事部 工事課 主任の照崎 一真 氏は、「設計チームから渡された図面を現場チームが確認する際に、複数図面のモデルを連携させることで、設計干渉を自動でチェックできている」と、そのメリットを話す。
3Dモデルは、VR(Virtual Reality:仮想現実)技術と組み合わせることで、新人教育や施主へのプレゼンテーションにも役立て始めている。「図面の理解には高度な技術と豊富な経験が必要だ。建築経験が少ない若手や施主にとって完成形をイメージするのは難しい」(関東工事部 工事第一部 横浜流通工事課 課長の元阿弥 俊輔 氏)からだ。
Revitなどが持つBIMデータを、VRソフトウェアの「Prospect」(米IRISVR製)を使って、3D画像化を図っている。
現場の点検・メンテナンス業務では、3D図面と現場写真を連携することで着工前と施工後を一元的に記録・管理している(図1)。「手書き文化が根強く、記録するだけで、そこに示された知識や経験が活用されてこなかった業務だ」(元阿弥氏)という。プロジェクト管理ソフトウェア「PlanGrid」を使い、複数プロジェクトにまたがるデータを管理する。
現場作業はリモートワーク化が困難な業務の代表例でもある。BIMデータの施工現場での活用について元阿弥氏は、「わざわざ事務所に帰って図面を出力する手間がなくなったり、バーチャルに現場を移動して点検業務ができるようになったりと、そのメリットは大きい」と話す。
関東工事部 工事第一部 横浜流通工事課 主任 清水 慶典 氏は、「図面の共有や点検の記録など、現場のデジタル資産を増やすことでデータ活用は加速し、データドリブン経営へとつながっていく」とした。
現場の変化をBIMモデルで一元管理し人的ミスを排除
施工後の建物の運営・保守にBIMを適用する「運用管理型BIM」の実証実験も進めている(図2)。同社が奈良県に持つオープンイノベーション施設「みらい価値共創センター コトクリエ」で実施したもので、「有効な成果が得られている」(東京本社 技術統括本部 建設DX推進部 建設DX基盤グループの三上 智大 氏)という。
運用管理型BIMの実証は、コトクリエの空調や電気といった設備のセンサーデータや館内の画像データなどをBIMに採り入れ、中央から監視・制御できるかどうかを検証した。例えば、重大な故障が起こった際に、設備担当者が異常の有無を確認し、現場作業者に必要な処置の指示を出せるかどうかなどである。
そのために、FM(Facility Management)システムの「Archibus」(米Archibus製)を、BIMソフトウェアの「Revit」(米Autodesk製)とBIM 360を、API(アプリケーションプログラミングインターフェース)である「Autodesk Forge」を使って連携させた。
この仕組みでは、温度など施設内の状態が設定値を外れるとArchibusの自動通報機能を使ってアラートを発信。その情報をRevitで受け取り、BIMのビューワー(参照)機能を使って問題のある設備の位置をリアルタイムに報告する。
三上氏は、「重要なのは、ArchibusのデータベースにBIMモデルが関連付けられていること。更新されたデータはリアルタイムにBIMモデルに反映され、情報ソースを一元管理できる。人為的なミスを排除でき、業務プロセス間でもシームレスな移行が可能になる」と、その効果を話す。