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三菱電機、出口の見えない“PoC疲れ”をソラコムとの共創で脱却図る

DXプロジェクトの立ち上げ支援サービス「SORACOM Booster Pack」の価値

2023年4月18日

DXプロジェクトの増加を受け社外との共創に動く

 DX時代に合わせたPoCの手法を確立するために三菱電機の設計システム技術センターが活用しているのが、IoTのための通信サービスなどを手掛けるソラコムが提供するDXプロジェクトの支援サービス「SORACOM Booster Pack」である(図1)。2〜4日間の集中的なワークショップを実施し、そこからDXプロジェクトにおけるPoCの計画立案と実行に必要なレポートを提供する。レポートには具体的なシステムアーキテクチャーや次のアクションへのアドバイスなどを含む。

図1:DXプロジェクト全般を対象にソラコムはプロフェッショナルサービスを提供するが、「SORACOM Booster Pack」では特に立ち上げ時に焦点を当てる

 ソラコムのプロフェッショナルサービスコンサルタントである須田 桂伍 氏はSORACOM Booster Packの位置付けについて、「当社はDXプロジェクトにおけるIoT活用に対応したコンサルティングサービスを提供しています。ですが、PoCの早期立ち上げと成果の獲得に苦慮されているケースが少なくないため、PoCをはじめとしたDXプロジェクトの立ち上げ時にフォーカスした支援サービスとして提供し始めました」と説明する。

写真3:ソラコム プロフェッショナルサービスコンサルタントの須田 桂伍 氏

 設計システム技術センターとソラコムの最初の接点は、IoTデバイスとクラウドを接続するためのサービスとしての採用だった。「IoTシステムの開発においても以前は、すべてを自分たちで考え自分たちで実現してきました。しかし、当社のコア領域ではない部分では社外にあるサービスを積極的に採用し、開発案件のスピードアップやブラッシュアップに力を注ぐべきだと判断したのです」と、升野氏は話す。

 IoT接続サービスを採用するなかで、ソラコムからDXの立ち上げ支援サービスの存在を紹介される。IoT接続サービスを中核にデバイスの開発からクラウド活用までのコンサルティングや、そのためのPoC、PoC後の実展開まで、ソラコムは種々のIoT関連プロジェクトを経験している。古賀氏は、「PoCの計画立案はもとより、その結果をどう評価するかに対しては、多数の経験を持つソラコムの客観的な視点が有効なはずだと期待が持てました」と古賀氏は、第一印象を話す。

過去のPoCを題材にソラコム流の枠組みを適用

 PoC手法の確立に向けた取り組みの第1弾として三菱電機が試みたのが、過去に実施したPoCを題材に、SORACOM Booster Packの枠組みの中で進めてみることだった。そこでは大きく2つのテーマを設定した。

 1つは、そのPoCに必要な具体的なシステム構成の決定だ。ソラコムの須田氏は「現場に置くIoTデバイスの構成から、クラウドへの接続、データの蓄積まで、IoTシステムをエンドツーエンドでどう実現するかを、弊社サービスに限定することなく適材適所で判断し、どうやって軌道に乗せていくかを徹底して議論しました」と話す。

 もう1つのテーマが、今後を見据えたモデルプロジェクトとして確立である。「PoCへの取り組み方や考え方を整理しながら、まとめていきました」(須田氏)

 ワークショップの成果は上々だった。古賀氏は、「システム構成の議論を始めてから実質2週間ほどで大枠の設計を終えられました。当社だけで進めたPoCでは、約1年を費やしたケースなどもあります。期待通り、PoCをどこで終了し評価するかのラインの設定がとても参考になり、説得力もありました」と評価する。

写真4:三菱電機・設計システム技術センターが支援したPoCの実施例

 升野氏も「スマートファクトリーのためのIoTシステムではセキュリティへの関心が高まっています。自社開発だけでは限界があるだけに適材適所での提案には期待を寄せています。加えて、ワークショップのアウトプットとして得られるレポートは次につながる貴重な財産になります」と話す。

モデルケースを横展開し仮説検証のスピードを高める

 SORACOM Booster Packのワークショップを経てPoCのモデルケースを作成できた三菱電機の設計システム技術センターでは、同モデルの水平展開を進めていく。工場からIoTに関する相談を受けた際には、今回のモデルケースを元に社外のサービスを活用しながら、PoCを早期に立ち上げ完遂するまでを支援する。さらに、そこから得た知見を工場とも共有しながら仮説検証プロセスを素早く回していくことに力を注ぐという。

 「設計システム技術センターとしても『製品開発のリードタイムを短縮し、顧客およびステークホルダからのフィードバックをより頻繁に獲得する』という意識改革を社内に働き掛けていきます。顧客企業や当社の現場が本当に必要とするプロダクトを実現するためには、社外の力も必要になります。そのためには、自社のコア技術と社外の技術を正しく組み合わせて顧客価値を実現する能力を培っていかなければなりません」と古賀氏は話す。

 ソラコムの須田氏は、「DXが経営課題の中核になり先進事例における本番のシステム構成などがリファレンスモデルとして参考にされるようになったことで逆に、その前段階であるPoCが十分かどうかの判断を難しくしています。モヤモヤを抱えたままとどまるのではなく、社外に答えを求めるのはオープンイノベーション(共創)の王道です。当社は、種々の経験に基づく客観的なアドバイスによってプロジェクトの加速に徹します」と応えた。

お問い合わせ先

SORACOMプロフェッショナルサービス

https://soracom.jp/professional_services/