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独BMW、サステナビリティと同時にクルマの“あるべき姿”も模索
ビー・エム・ダブリュー ブランドマネジメント本部 本部長 遠藤 克之輔 氏
利用段階の柱となるのがEVシフトである。BMWでは、2025年までにEVの出荷台数を200万台にまで引き上げ、2030年には総販売台数の半数をEVにする計画だ(図2)。自動車部材の50%をリサイクル可能にしたうえで、プラスチックのリサイクルでは事業化も推し進める。
日本国内では自動車業界初のエコマーク認定を取得した。販売店であるBMW東京におけるカタログの電子化によるペーパレス化や制服のリサイクルなどの推進が評価された。同様の動きが他のディーラーにも広がっている。
これらの施策において、遠藤氏が特に重要と訴えるのが「多様な関係者との意見交換」である。「CO2排出量の削減は確かに大切だが、現状を変えるのは痛みも伴う」(同)からだ。
遠藤氏は、「サプライヤーと協議し現実的な目標の設定が不可欠だ。その結果を投資家向けレポートなどにまとめれば、希少金属の代替など新たな切り口からの改善提案が寄せられる。この好循環がBMWが打ち出す施策の高度化を下支えしている」と力を込める。
デジタルで変わる自動車と顧客のコミュニケーション
種々の施策と並行して、BMWは自動車そのものの“あるべき姿”の模索も続けている。その最新のコンセプトモデルになるのが、2023年1月に発表したEV「BMW i Vision Dee(Digital Emotional Experience)」である。
「Dee(Digital Emotional Experience)」の名が示す通り、同社にはデジタル技術を使った仕掛けをいくつも盛り込んだ。例えば、ボディ表面に240枚の電子ペーパーを貼り付けることでボディカラーの変更を可能にした「iX Flow」技術が、その1つ。
フロントガラス全体のHUD(ヘッドアップディスプレイ)化も採り入れた。表示モードの切り替えにより、「運転に必要なデータだけでなく、AR(Augmented Reality:拡張現実)コンテンツの投影などができる。「停車時にはフロントガラス全体にバーチャル画面を投影することで仮想世界とつながれる。フロントガラス全面のHUD化は、早ければ2026年に発売する新車への採用を予定している」(遠藤氏)という。
自動車のあり方そのものを模索するBMWにあっては、顧客や市場への適切なメッセージングの重要性が増している。そのなかで特に意識しているのが「サステナビリティ」だという。その理由を遠藤氏は、こう説明する。
「いわゆるラグジュアリーブランドは、提供が掲げるパーパスが『社会やコミュニティーに、どんな影響を及ぼし、何を還元できるのか』という問いに向き合わなければ存続できない時代になった。サステナビリティへの配慮は欠かせず、『EVによる貢献とは何か』を自問自答し続けている」
加えて「デジタル化とオフラインの融合の観点も欠かせない」(遠藤氏)。デジタル技術が社会インフラに浸透していく中では、その重要性は高まる一方だ。遠藤氏は、「BMW i Vision Deeというコンセプトモデルにより当社は、オフラインのリアル世界とバーチャル世界の融合をさらに一歩前進させた。両者の融合をより強く意識せざるを得ない」と話す。
そのうえでBMWは、「EV技術を武器に、ラグジュアリーブランドとしての新たな価値を開拓しながら、サステナブルブランドとしての地位確立も目指す」(遠藤氏)考えだ。