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浜野製作所、町工場ならでは強みを武器に共創で存在価値を築く
浜野製作所 代表取締役社長 浜野 慶一 氏
製造業におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の波は、企業規模の大小を問わず、中小企業にも迫り来る。東京都墨田区で金属加工を手掛ける浜野製作所の代表取締役社長である浜野 慶一 氏が、東京で2023年2月に開催された「CIO Japan Summit」(主催:マーカス・エバンズ・イベント・ジャパン)に登壇し、町工場ならではの強みを生かした差別化戦略について説明した。
「“町工場だからできない”ではなく、“町工場だからできる”ことがたくさんある。町工場のパフォーマンスを高めるために、得意領域でイノベーションを起こしていく」――。東京都墨田区に本社を置く浜野製作所の代表取締役社長である浜野 慶一 氏は、こう宣言する。同氏は金型専門として創業した浜野製作所の2代目で、さまざまに事業の幅を広げている。
下請けに留まらず、ものづくりの上流にコミットする
設立46年目を迎える浜野製作所が位置する東京墨田区は、東西6キロメートル、南北5キロメートルと東京23区では比較的小さな区だ。だが都内では大田区に次いで2番目に工場が集積する地域でもある。浜野製作所の従業員数は現在50人だが、浜野氏は「墨田区に集積するのは、中小企業というよりは小規模零細工場が大半を占めている。全体の80%近くが従業員3人以下の町工場だ」と話す。
東京でのものづくりについて浜野氏は、「日本で一番ものづくりに適していない土地かもしれない」ともいう。多くの工場が「民家が立ち並ぶ細い通り沿いにある。騒音や振動に配慮して夜遅くや週末に工作機械は動かせない」(同)からだ。加えて「東京は土地代が高く固定資産税もかかれば、最低賃金も高く会社が負担する社会保険料も高い」(同)。それだけに「他の地域の工場や、海外の生産拠点と同じような仕事では太刀打ちできない」と浜野氏は強調する。
他社の差別化策として同社が最初に取り組んだのが、少量多品種の部品を加工する精密板金事業である。「物流網が国内に広がったことで目に見えない競合他社が現れた。下請け型の部品製造だけでは会社が成り立たなかった」(浜野氏)ことが契機になった。
中小企業について浜野氏は「大企業から安定して継続する量産加工の仕事を受けたいという気持ちもわかる。下請けも誇り高い仕事ではあるか、下請け体質からの脱却は必要だ」と指摘する。そのため同社は、「ものづくりの情報の上流からコミットする」(同)ことを経営方針に掲げる(図1)。そのために「東京という地域性をコミュニティとしてとらえ、それをメリットに変える、ものづくりをしていきたい」と強調する。