• UseCase
  • 製造

独BMW、サステナビリティと同時にクルマの“あるべき姿”も模索

ビー・エム・ダブリュー ブランドマネジメント本部 本部長 遠藤 克之輔 氏

岡崎 勝己(ITジャーナリスト)
2023年4月12日

環境への意識がグローバルで高まる中、自動車メーカーはEV(電気自動車)シフトなど大きな変化を求められている。ビー・エム・ダブリューのブランドマネジメント本部 本部長 遠藤 克之輔 氏が、東京で2023年2月に開催された「Manufacturing Japan Summit 2023」(主催:マーカス・エバンズ・イベント・ジャパン)に登壇し、同社におけるEVの歴史やCO2排出量削減に向けた取り組みなどについて解説した。

 BMWは世界中に多くのファンを抱える自動車メーカーの1社。1913年に航空機のエンジンメーカーとして創業し、民生用オートバイ「R32」や、同社初の自動車「BMW 303」の開発以降、同社のブランドスローガンである「駆けぬける歓び」を追求してきた。

 そのブランドスローガンとは異なる側面からの技術も蓄積し続けてきたという。環境意識の高まりを背景に世界で関心が高まるEV(電気自動車)技術が、それだ。「出発点は1972年のミュンヘンオリンピックで提供したマラソンレースのサポート用EVにまで遡る」と、ビー・エム・ダブリューのブランドマネジメント本部 本部長である遠藤 克之輔 氏は説明する。

写真:ビー・エム・ダブリュー ブランドマネジメント本部 本部長 遠藤 克之輔 氏

 ミュンヘンオリンピックから30年以上を経た2007年には、EVプラットフォームの先鋭化を目指す「iプロジェクト」を立ち上げた。同プロジェクトの初成果が、2013年に発売した世界初の量産型EV「BMW i3」である。これまでに累計25万台を出荷した。

 その後、2014年にはプラグインハイブリッド車(PHEV)の「BMW i8」を、2021年にはEV専用のSUV(Sport Utility Vehicle:スポーツ用多目的車)プラットフォームを採用した「BMW iX」を発売した。BMW iXでは、「内装のレザーのなめしに食用オリーブオイルを用いている。作業に必要な水の使用量を大きく減らせ環境負荷を軽減できる。EV化にとどまらず環境保護に力を入れている」と遠藤氏は説明する。

4つの「Re」で100万人都市20年分のCO2排出量を削減

 そのBMWは、CO2排出量を2030年までに2億トン削減するという数値目標に掲げている。「100万人規模の都市が20年間に排出する年間CO2に匹敵する量」(遠藤氏)だ。

 その実現に向けたアプローチが、Re:think(再考)、Re:duce(削減)、Re:Use(再使用)、Re:cycle(リサイクル)の4つの「Re」である。バリューチェーン全体を対象に、「サプライチェーンで80%、プロダクトで20%、利用段階で40%の減を目指す」(遠藤氏)という(図1)。

図1:BMWは「Re:think(再考)、Re:duce(削減)、Re:Use(再使用)、Re:cycle(リサイクル)」によりサプライチェーン全体でのCO2排出量削減に取り組む

 具体的には、どう削減していくのか。サプライチェーンにおける削減策は再生可能電力の利用促進である。自動車の部材は鉄やアルミ、プラスティックといった素材から成っており、その製造や加工にエネルギーを消費する。そこで、「サプライヤー各社に太陽光発電など再生可能エネルギーによる電力利用をうながし、化石燃料に起因するCO2の発生を抑える。併せて、リサイクルなども積極的に呼びかける」(遠藤氏)

 プロダクトでも、再生可能エネルギーによる電力への置き換えやリサイクルが主要施策となる。BMWではすでに「工場内で利用している物流用車両のEVへの置き換えを完了している」(遠藤氏)という。