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アストラゼネカ、現場が能動的に行動する文化の醸成が工場サステナビリティの“鍵”

アストラゼネカ 執行役員 オペレーション本部長 濱田 琴美 氏

岡崎 勝己(ITジャーナリスト)
2023年4月14日

国内・米原工場では電化によるカーボンニュートラ化が進む

 サスティナビリティへの戦略的な取り組みの下、特に温室効果ガスの排出量が多い工場では、「グローバル規模でカーボンニュートラル化の動きが盛り上がっている」(濱田氏)。その中で、日本法人の生産拠点であり小分け製造、包装および品質管理に従事する米原工場でも、「カーボンニュートラル化の取り組みを加速させている」(同)

 工場におけるカーボンニュートラル化の取り組みは一般に、(1)改善活動などを通じたエネルギー消費量の削減、(2)再生可能エネルギーによる化石燃料由来エネルギーの置き換え、(3)必要なエネルギーの再生可能エネルギーによる調達、の3本柱からなる。このうち(1)エネルギー消費量の削減に向けて米原工場が取り組むのが、各種工場設備の効率化による電気使用量の削減である(図3)。

図3:米原工場では、消費電力削減に向けて、コンプレッサーやモーター、空調などの多様化・効率化に取り組んでいる

 具体的には、コンプレッサーをエネルギー効率の高い機種へ置き換えることで電気使用量の14%を削減した。人感センサーを備えたLED照明への切り替えや、省エネ性能が優れるモーターへの置き換えなども進めている。電力消費量が大きい空調においては、外気と環気を組み合わせて空調効率を高めるMix空気循環へ移行し、取り込み外気を現状の50%から60%に高めることで一層の効率化を目指す。

 (2)化石燃料由来エネルギーの置き換えでは、米原工場で唯一、ガスを利用してきた給湯器を電化した。(3)再生可能エネルギーによる調達としては、敷地内に太陽光発電パネルを設置した。「現在、太陽光発電により工場で消費する電力の20%を賄っている」(濱田氏)という。

 さらに米原工場で製造する製品自体の環境配慮にも前向きに取り組んでいる。例えば、薬の添付文書はすべて電子化を完了しており、廃棄物換算で180トン、CO2排出量換算で154トンの削減につなげている。

 製造工程では、プラスチックとアルミを使った包装材「ブリスターパック」の端切れが必ず生じ、従来はすべてを廃棄処分してきた。だが、それをリサイクルする仕組みを開発し、すでにテストに成功した。2023年中にも実運用に乗り出す計画だ。

地域連携などで社員の自発的活動をうながす文化を醸成

 そのうえで濱田氏は、「サステナビリティに関する活動は多岐にわたる。それだけに、社員の1人ひとりが能動的に行動するカルチャーを醸成できるかどうかが、サステナビリティ活動のカギを握る」と語る。

 カルチャー面で一役買っているのが、米原工場における草の根活動「チャンピオン活動」だ。これまでに、食堂のフードロス削減や、琵琶湖の清掃を通じた環境保全といった活動が、社員の手により企画・実施されてきた。「環境保全活動は滋賀県からも高く評価され、『令和3年度 しがCO2ネットゼロみらい賞』の受賞にもつながった。そうした健全なプレッシャーが、米原工場社員の新たなやる気につながっている」(濱田氏)

 もっとも、「アストラゼネカのゼロカーボンへの道のりは、まだ半ば」(濱田氏)。グローバルな動きと連動する同社の次の一手が注目される。