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オリンパス、製造ラインの最適化に向け熟練者の作業を含めたデジタルツインを構築へ

佐久間 太郎(DIGITAL X 編集部)
2023年10月27日

オリンパスが、超小型内視鏡(Endoscopic Solutions)の製造拠点のスマートファクトリー化を進めている。熟練者の作業をAI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)の技術を使いデータ化しデジタルツインを構築する。オリンパス 製造機能 デジタルものづくり、グローバル バイスプレジデント 本部長の徳永 幸二 氏の「LiveWorx 2023」(主催:米PTC、2022年5月)での講演内容から、製造ラインでの実証の成果などを含め紹介する。

 「当社工場には高い技術を持つ職人がいる。彼らの仕事を最大限に尊重すると同時に、デジタル技術を活用して工場で働く職人をサポートすることで、ものづくりの技術を次の世代に継承していきたい」――。オリンパスがグローバルに展開する全工場のデジタル変革を推進する製造機能 デジタルものづくり、グローバル バイスプレジデント 本部長の徳永 幸二 氏は、このように話す(写真1)。

写真1:オリンパス 製造機能 デジタルものづくり、グローバル バイスプレジデント 本部長の徳永 幸二 氏

 オリンパスがグローバルに展開する事業において、その約53%を占めるのが内視鏡(Endoscopic Solutions)事業だ。主に医療現場で使われる超小型のマイクロスコープを製造・販売する。特に消化器内視鏡は世界市場シェアの約70%を、外科用内視鏡は約25%を、それぞれ占めている。これらを含めた内視鏡事業の売上規模は2022年度5月時点で4615億円である。

 内視鏡は精密機械である。例えば、レンズの大きさは直径0.25~2.5ミリメートル。大きさが5ミリメートルの米粒と比べれば、最小径は、その20分の1。工場でのレンズの組み立てについて徳永氏は、「顕微鏡を使い、ピンセットによる手作業で組み立てている」と説明する。

 さらに、被写体の光を電気信号に変換する撮像素子の取り付けや配線には、「正確かつ慎重な作業が求められる。はんだ付けならミクロン単位の作業精度が必要だ」(徳永氏)という。

 こうした高い精度で内視鏡を組み立てられる技能を持つ社員に対しては、(1)マスター、(2)スーパーバイザー、(3)アドバイザーの3段階で評価し、「特別タイトル」として社長名入りのバッジと賞を授与している。マスターは他社に比べて特筆に値する技術者、スーパーバイザーは会社全体で一流の技術者、アドバイザーは工場を代表する技術者だ。

現場のデジタルツインはサプライチェーンのトレーサビリティにつながる

 精密かつ手作業への依存度が高い内視鏡の製造ラインにおいて、オリンパスが取り組むのがデジタル技術を使ったスマートファクトリー化である。背景には、主に(1)医療機器市場の高い成長、(2)コンプライアンスの厳正化の2つの要因がある。

 医療機器産業の成長は、半導体や情報サービスと同じく高水準にあると言われている。だが高まる需要に対しては、「安定供給のための体制強化に加え、高品質な製品を素早く開発しなければならなくなっている」(徳永氏)のが現状だ。

 一方のコンプライアンスは、より厳格化・多様化が進んでいる。種々の規制やルールを遵守しながら製造工程を高めるために、「複雑な設計変更・品質管理の体制が求められている」と徳永氏は話す。