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GDBL、脱炭素社会に向けて電力データ活用アプリ「ZeroCa」を事業化

中村 仁美(ITジャーナリスト)
2024年1月16日

ZeroCaを脱炭素社会実現のプラットフォームに

 これらの試行錯誤を経た2023年3月、電力データを“脱炭素”のために活用するという方針に沿い、ZeroCaの方向性を決定し、具体的にアプリケーション開発に乗り出した。

 ただ、そこにたどり着くまでの間は、新規事業の立案支援を手掛ける電通デジタルの支援も受けた。稲葉氏は、「当社の母体である電力3社は電力供給や電力データの収集のプロであり、NTTデータは実証環境の構築やデータ分析のプロだ。だが正直、顧客価値を考えたサービスの設計は、それほど得意ではないからだ」と、その理由を説明する。

 電通デジタルとしては、「デジタル技術を使った価値創造を支援すると言っても具体例を提示するわけではない。対話や議論の場において、議論の視点を提供することで、利用者の価値を高めるためには何を考えなければならないかに自ら気付いてもらえるよう心がけた」(CXトランスフォーメーション部門ビジネスデザイン事業部ビジネスデザイン第3グループシニアコンサルタントワークショップデザイナーの矢萩 健太 氏)という。

写真2:GBDLの稲葉氏(中)/吉谷氏(左)と電通デジタルCXトランスフォーメーション部門ビジネスデザイン事業部ビジネスデザイン第3グループシニアコンサルタントワークショップデザイナーの矢萩 健太 氏

 リリースから間もないため、まだZeroCaの具体的な成果までは形になっていない。だがGDBLは「ZeroCaを個人や世帯が脱炭素に取り組むためのサービスに留まらせることは考えていない」(稲葉氏)と意気込みを隠さない。

 既に特定の自治体を対象にカスタマイズしたZeroCaの提供を予定する。「複数の自治体からの提供が決まっている」と稲葉氏は明かす。東京クールホーム・ビンゴのような、環境教育につながるコンテンツの開発なども計画する。

 その1つが、横浜市と共同で2023年12月18日から2024年3月14日に実施する「YOKOHAMA ECO BINGO」。ZeroCaを使いながら、中学生が家族と共に環境配慮に資する知識やアクションを学び、実行できる仕掛けとして、ビンゴ形式のWebサービスを開発し提供する。横浜市は、2050年までに脱炭素化を目指す「Zero Carbon Yokohama」を進めている。

 ZeroCa自体に対しても、利用者の行動ログなどの分析から、より効果的な行動を促すフィードバック機能の追加なども検討する。そのうえで近い未来には「ZeroCaを脱炭素社会を実現するためのプラットフォームに育てたい」と稲葉氏は意気込む。

 GDBLのデータ活用事業部 主任の吉谷 遼士 氏も「現時点ではZeroCaによる電力データ活用は自治体と個人の掛け合わせが主体だが、今後は、事業会社など複数社を掛け合わせたサービスに発展させ、社会課題の解決につなげていきたい」と続ける。

 電通デジタルの矢萩氏は、「脱炭素の市場は発展途上にあり、個人が行動変容を起こすだけのスキームは完成していない。だからこそ、電力データを活用できるGDBLと連携することは、多くの事業会社に脱炭素市場への参入を容易にすると同時に、それぞれが提供できる価値を組み合わせた新しいサービスを創造できるのではないか」と期待する。

 脱炭素のプラットフォームを目指すZeroCaが今後、どのような進化を遂げ、私たちの生活における行動を変えていくのかに注目したい。