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GDBL、脱炭素社会に向けて電力データ活用アプリ「ZeroCa」を事業化

中村 仁美(ITジャーナリスト)
2024年1月16日

GDBLは、東京電力パワーグリッド、中部電力、関西電力送配電、NTTデータの4社が2022年4月26日に設立した事業会社。電力データを活用する新規サービスの創出が目的だ。その第1弾となるサービス「ZeroCa(ゼロカ)」を2023年10月5日に開始した。自治体や企業と、個人や世帯とを電力データで結び付け、脱炭素などを軸に各種サービスの創出を狙う。サービス開発では、新規事業の立案を支援する電通デジタルのサービスの助けを受けた。

 「電力会社各社は、スマートメーターからの電力データの活用が『本当に世の中のためになるのか』を検討し実証実験を続けてきた。ようやく、その解の1つが見えてきた」−−。GBDL データ活用事業部 課長の稲葉 行紀 氏は、2023年10月に開始した新サービス「ZeroCa」について、こう話す。

写真1:GBDL データ活用事業部 課長の稲葉 行紀 氏(左)と同事業部 主任の吉谷 遼士 氏

 ZeroCaを開発したGDBLは、東京電力パワーグリッド、中部電力、関西電力送配電、およびNTTデータの4社が2022年4月26日に設立した電力データ活用サービスの企画・開発会社。東京電力パワーグリッドとNTTデータが2018年11月に設立したグリッドデータバンク・ラボ(19年3月に関西電力と中部電力が参画)の事業全般を引き継いだ。

 GDBLが扱う電力データとは、全国に8000万台あるスマートメーターで取得した電力使用量などを示すデータである。2022年4月に施行された電気事業法改正によって電気事業者以外の利用が可能になった。2023年10月からは、電力データを電力データ管理協会が一元管理し、有償サービスとして提供している。同サービスを使ってGDBLが開発したサービスの第1弾がZeroCaだ。

個人や世帯の活動を地域全体に広げるため自治体を巻き込む

 ZeroCaは、電力データを介して、住民・個人を自治体や企業と結び付けるためのB to B to C(企業対企業対個人)型のアプリケーションである。GDBLはZeroCaを「脱炭素の体重計」(稲葉氏)と呼んでいる。電力使用量の可視化を軸に、住民・個人には環境配慮への新たな気付きや習慣化を後押し、自治体や法人に向けては脱炭素社会の実現に向けた計画から実行・振り返りまでのサイクルの構築を支援するからだ。

 具体的な機能としては、(1)グリーンスコア、(2)環境アクション管理、(3)「みえるデンキ」の3つを用意する(図1)。

図1:ZeroCaが提供する(1)グリーンスコア、(2)環境アクション管理、(3)「みえるデンキ」の3機能の画面例

グリーンスコア :脱炭素につながる行動の実施程度を測定するための機能。ここから「脱炭素の体重計」という呼び名が生まれた

環境アクション管理 :日常の買い物や電気の使い方といった環境行動への取り組みを管理し、その習慣化を促す機能

みえるデンキ :電力使用量をリアルタイムに可視化する機能。CO2削減量の策定や節電アクション、気温も表示できる。

 ZeroCaの商用化までには、「グリッドデータバンク・ラボ時代から、国や自治体などと電力データ活用の社会実装に向けた対話を繰り返してきた」と稲葉氏は振り返る。そこでは、テーマを脱炭素に限ることもなく、さまざまな実証実験も実施した。「空き家対策や独居老人の見守り、防災計画、エリアマーケティングといったユースケースを実地検証した」(同)

 そうした対話の中で、国や自治体などが共通に抱える課題として存在感が高まってきたのが「脱炭素」や「カーボンニュートラル」のキーワードだった。「CO2排出量の多くは電力由来であり、家庭ではCO2の47%が電力利用によるものだ。個人や世帯の節電を促すことが脱炭素社会の実現への一歩であり、そこに“世の中のため”の電力データ活用法が見えた」と稲葉氏は力を込める。

 そこからは、個人の環境行動を喚起・啓発するための情報発信にも取り組んだ。例えば2022年夏には夏休み中の小学生を対象にしたオンラインゲーム「東京クールホーム・ビンゴ」を東京都と共同で開発・提供した。節電など環境配慮に関する知識や行動を学び、実行することでビンゴを達成し、そこで得たポイントで、お楽しみイベントに応募ができるという仕掛けである。

 同ゲームからは、「子どもが環境行動のインフルエンサーになり、親を巻き込んでいけることが分かった」と稲葉氏は話す。実際、ビンゴを達成した子どもたちの親へのアンケートでは「子どもが環境行動を取るのを見て節電行動を始めた」「他にどういった行動が節電や脱炭素につながるかを教えてほしい」という声が多く寄せられたという。