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建設大手の蘭VolkerWessels、建設廃棄物の削減に向け「マテリアル・パスポート」を使い材料選択を最適化

佐久間 太郎(DIGITAL X 編集部)
2024年2月27日

オランダの建設大手VolkerWessels(フォルカーヴェッセルス)傘下でインフラ建設を手掛けるVolkerWessels Infrastructureが、建設から解体までで排出される廃棄物の削減に取り組んでいる。そのために材料の使用履歴「マテリアル・パスポート」を活用し材料選択の最適化を図る。同社のInformation Managerであるイェルン・ティシャウザー(Jeroen Tishauser)氏が「Autodesk University 2023」(主催:米Autodesk、2023年11月)に登壇し、自社での取り組みを紹介した。

 「社会インフラは何世代にも渡って使用され、その建設プロジェクトでは材料や資源を大量に消費する。建設会社は、そこに大きな責任を持ち、持続可能性を推進する大義がある」――。橋梁やトンネルなど大型インフラを建設する蘭VolkerWessels Infrastructure(フォルカーヴェッセルス・インフラストラクチャー)のInformation Managerであるイェルン・ティシャウザー(Jeroen Tishauser)氏は、こう話す(写真1)。

写真1:蘭VolkerWessels InfrastructureでInformation Managerを務めるイェルン・ティシャウザー(Jeroen Tishauser)氏

 VolkerWesselsはオランダに本社を構える建設サービス企業。傘下のVolkerWessels Infrastructureは、イギリスやドイツなど欧州の顧客向けに橋やトンネルなどの社会インフラを建設している。ティシャウザー氏が指摘するように、欧州の建設業界では、建設や解体の過程で生み出しているCDW(Construction and Demolition Waste:建設・解体廃棄物)が大きな課題の1つになっている。

オランダでは6つの“R”で資源の使用量を削減

 EC(欧州委員会)によると、CDWはEU(欧州連合)全体で排出される廃棄物のうち33%を占める。一方で、そのリサイクル・再利用率はEU全体で10〜90%と大きな幅がある。その要因をティシャウザー氏は、「EU加盟国によって廃棄物の定義や分類の違いが異なるためだ」と説明する。そのため「国家間での排出量比較が困難になっている」(同)のが現状だ。

 VolkerWessels Infrastructureが本社を置くオランダでは、資源の使用量削減に向けた理念として、オランダ環境アセスメント庁(PBL:Planbureau voor de Leefomgeving)が「R-Ladder(Rの梯子)」を策定している。

 R-Ladderは資源の使用量削減策として、(1)Refuse&Rethink:拒否と再検討、(2)Reduce:削減、(3)再利用:Reuse、(4)Repair&Refurbish:再製造、(5)Recycle:リサイクル、(6)Recover:回収、の6つのRを挙げる(図1)。

図1:オランダ環境アセスメント庁(PBL:Planbureau voor de Leefomgeving)が持続可能性を戦略的に高めるために定める「R-Ladder(Rの梯子)」の概念

 オランダ企業にとっては、R-Ladderの概念が「責任ある選択をするための指針」(ティシャウザー氏)である。VolkerWessels Infrastructureにおいても、「最終的な廃棄に至るまで資源の効率的な利用に貢献するために、建設プロジェクトがサーキュラリティ(循環)に則って持続可能であるかを6つの“R”に沿って常に自問し、材料や素材の使われ方を見直している」(同)と強調する。

 例えば(1)Refuse&Rethink:拒否と再検討では、「まずは不必要なものに『ノーと』言えるだけのマインドシフトが必要だ」(ティシャウザー氏)とし、「新しい活用方法を創造的に開発したり、寿命を伸ばしたり、古いものを新しいものに変えたりを検討する」(同)という。

 (5)Recycle:リサイクルや(6)Recover:回収では、廃棄物削減のためのに選択肢として、「材料の返品や交換を受け入れ可能なサプライヤーを探し出す」(ティシャウザー氏)とする。「ある当事者にとっては無価値に見えても、別の当事者にとっては貴重な資源になる可能性がある」(同)ためだ。直接的なステークホルダーはもとより、「サプライチェーン上の他企業や社会組織、政府当局などとの連携も重要だ」(同)という。