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パラマウントベッド、国内外3拠点の設計・開発データをグローバル共通のPLMで管理・共有

パラマウントベッド 技術開発本部 技術戦略室の河瀬 健 氏と髙田 徹 氏

佐久間 太郎(DIGITAL X 編集部)
2024年7月12日

 3D CADとPLMの連携における工夫点の1つとして、同社技術開発本部 技術戦略室 エキスパートの髙田 徹 氏は、「色違いの部品の管理」を挙げる(写真2)。色違いの部品は、「形状や材質は同じでも、生産段階では異なる部品として扱わなければならず、単純な連携ではPLM上でのBOM管理が煩雑になる」(同)からだ。

写真2:パラマウントベッド 技術開発本部 技術戦略室 エキスパートの髙田 徹 氏

 パラマウントベッドでは、CADでの設計時、色違いの部品については、色数分の3D CADファイルを用意し、ファイル名の末尾に付ける英文字で区別している。ブルーの部品の末尾は“A”、ピンクは“B”、グリーンは“C”といった具合である。グローバルPLM導入以前は、これらを単純にPLM連携していたため、「PLM側にも3DモデルやBOMが色数分存在し、設計変更があれば、色違いの部品の3DモデルやBOMをそれぞれ編集・修正する手間が生じていた」(髙田氏)

 これに対しグローバルPLMでは、CADファイルから色情報を除いた部分を「マスターパート」に設定し、その配下に「カラーパート」として色情報を管理できる(図1)。これによりカラーパートでは、マスターパートのBOMを複製すれば良く、「共通の構成要素を流用でき、ファイル名の変更などPLM側での編集作業を削減できている」(髙田氏)という。

図1:構成情報管理におけるマスターパートとカラーパートの関係

末端部品の設計変更から生産システム連携までを自動化する

 また製品管理では、(1)生産製品と(2)販売製品の2つの考え方を採り入れている。生産製品は、工場で生産し梱包・出荷する製品単位で、ベッドならフレームやボードセットなどを組み合わせたユニットを指す。一方の販売製品は、実際にユーザーが購入・使用する状態の製品単位で、カタログに掲載した商品の完成形を指している。

 つまり販売製品は、色や機能が異なる生産製品のユニットを組み合わせた結果になる。PLM上では、「生産製品である個々のユニットにIDラベルを貼付して管理し、部品に設計変更があれば生産製品の範囲で変更履歴を管理する」(髙田氏)という。

 例えば、生産製品の末端部品に設計変更が生じた場合、その部品と親子関係にある生産製品の単位にまでさかのぼってBOMを改訂する必要がある。その際は、生産製品のBOMをまるごと複製したうえで改訂し、最上位にあたる販売製品のBOMからは、最新の生産製品のBOMを自動で参照する(図2)。「新しいバージョンが増えても旧世代の履歴を残しつつ、販売製品のBOMを修正する必要がないのがメリットだ」と髙田氏は説明する。

図2:製品を(1)生産製品と(2)販売製品に分けて管理することで、販売製品のBOMを常に最新に保てるようにしている

 PLM上では、パーツや図面、仕様書など、設計・開発に関連するアイテムの変更に対し、責任者が複数件をまとめて承認できるようにしている。「1つのアイテムを起点にしたワークフロー処理をトリガーに、関連付いているアイテムを自動で変更できる。PDFへの署名・捺印、メール添付、生産システムへの連携などの後処理も自動で実施できる」(髙田氏)という。

 今後は、「開発拠点以外の、ベトナムやインドなどの海外生産拠点に対してもPLMの運用を拡大していく予定だ」と髙田氏は話す。海外事業が伸びる中で、交換やメンテナンス用品などアフターパーツの管理が複雑化しているからだ。加えて医療機器でもあることから、「顧客サービスの管理や、医療機器法など各国の法規制に対応するために技術情報の管理にも取り組みたい」と髙田氏は力を込めた。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名パラマウントベッド
業種製造
地域東京都江東区(本社)
課題海外の開発拠点で設計・開発のためのデータを共有し、バリエーション製造に対応しながら事業を拡大したい
解決の仕組み3次元設計モデルからBOMを抽出し、PLMソフトウェアで部品から完成品までの製品情報全体を管理する。設計変更におけるBOMの書き替えなどを自動化する仕組みを整備して設計・開発の効率を上げる
推進母体/体制パラマウントベッド、米Aras日本法人、エリジオン
活用しているデータBOMの部品データ、3D CADの設計データなど
採用している製品/サービス/技術PLMソフトウェア「Aras Innovator」(米Aras製)、「Universal CAD Plugin」(エリジオン製)、3D CADソフトウェア「SolidWorks」(仏ダッソー・システムズ製)
稼働時期2022年末(国内外の生産3拠点でのPLM導入・ソフトウェアのアップグレード完了時期)