• UseCase
  • 製造

パラマウントベッド、国内外3拠点の設計・開発データをグローバル共通のPLMで管理・共有

パラマウントベッド 技術開発本部 技術戦略室の河瀬 健 氏と髙田 徹 氏

佐久間 太郎(DIGITAL X 編集部)
2024年7月12日

医療・介護用ベッドメーカーのパラマウントベッドは、国内外の製造拠点で設計・開発データを共有するためにPLM(Product Lifecycle Management:製品ライフサイクル管理)システムを運用している。顧客ニーズや医療法規制などの要件を満たす製品を製造するためだ。同社 技術開発本部 技術戦略室 次長の河瀬 健 氏と同室 エキスパートの髙田 徹 氏が「ACE 2024 Japan」(主催:アラスジャパン、2024年6月)に登壇し、同社での設計・開発データの利用方法などを解説した。

 「設立時からのベッド製造を主軸に今後は、医療・介護・健康の分野で総合的なシステムやサービスを提供できる会社に変革していきたい」――。医療・介護用ベッドメーカーであるパラマウントベッドの技術開発本部 技術戦略室 次長の河瀬 健氏は、こう話す(写真1)。

写真1:パラマウントベッド 技術開発本部 技術戦略室 次長の河瀬 健 氏

 パラマウントベッドは、病院や介護施設、在宅医療の各現場で使われる医療・介護用ベッドの製造会社。ベッドだけでなく、マットレスなどの周辺機器の製造や睡眠計測システムなどの開発、医療科学分野の研究も手がける。600種類以上の製品/システムの開発・製造から販売・レンタルまでを事業に、その売上高は国内外のグループ全体で約1000億円、社員数は約4000人である。

 直近で力を入れるのが健康分野だ。2024年4月にモデルチェンジした「アクティブスリープベッド」が、その一例。「医療介護ベッドで培った技術を使い、一般生活者を対象に入眠を支援するベッド」(河瀬氏)として開発した。ベッドにセンサーを搭載し、体動から入眠を検知するとベッドの背を下げるなど、寝返りを打ちやすい環境を作る。専用のスマートフォン用アプリケーションを使って起床時間を設定すれば目覚めやすい傾斜にベッドの背を動かす。

 病院向けの「スマートベッドシステム」も開発・販売している。IoT(Internet of Things:モノのインターネット)技術を使い、睡眠データや体温・血圧といったバイタルデータを、看護師が管理室の端末からリアルタイムに確認できる。データは電子カルテシステムとも連携できる。河瀬氏は、「2023年3月末時点で32の病院が導入している。導入先を拡大していく計画だ」と話す。

グローバルのPLM基盤を整備して製品バリエーションを効率的に管理する

 パラマウントベッドの設計・開発拠点は、本社機能を持つ日本のほか、中国とインドネシアにある。河瀬氏は「海外拠点の設計・開発部隊と、国内の設計・開発部隊が協同で設計に取り組むケースがかなり増えてきた。そこではデータ管理やコミュニケーション面で多くの課題を抱えていた」と明かす。

 そこで取り組んだのが、グローバルPLM(Product Lifecycle Management:製品ライフサイクル管理)システムの構築だ。日本では既にPLMを使用していたが、グローバル化を図るに当たり、米Aras製のPLMソフトウェア「Aras Innovator」を世界標準に決めた。

 まずインドネシア拠点で2016年に導入を開始。2019年に日本に導入した後、中国に導入した。ソフトウェアのアップグレードや検証作業は2022年内に終了し、そこから本番運用を続けている。「3拠点全体で現在、開発者を中心に約200人が利用している」(河瀬氏)

 PLMの利用方法について河瀬氏は、「製品構成やナンバリングなどバリエーション管理が当社独自の仕組みだ」と語る。例えば、病院用電動ベッド「A6 series」では、機能や動作、各国の電源仕様に合わせたプラグ形状、カラーリングなどに複数の仕様があり、それらに法規制対応を加えて製造する。理論上は5万通り以上の組み合わせが可能だが、「現実的な組み合わせとして1000以上の機種を登録し管理している」(河瀬氏)という。

 PLMが管理するBOM(Bill of Materials:部品表)や変更履歴などの構成情報は、機械設計に主に使用している3D(3次元)CAD(コンピュターによる設計)ソフトウェア「SolidWorks」(仏ダッソー・システムズ製)などで設計した3Dモデルの構成情報から取り出す。データ変換コネクター「Universal CAD Plugin」(エリジオン製)を使い、CADファイルに記載されたBOMをPLMで管理できる形式に自動で変換する。