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産業ガスの大陽日酸、収益率向上を目的にグループ会社とのデータ連携を強化

大陽日酸 電子機材ユニット 電子機材ガス事業部 海外営業部 電材DXプロジェクト プロジェクトリーダーの武知 将平 氏

佐久間 太郎(DIGITAL X 編集部)
2024年8月15日

日本酸素ホールディングス傘下で、産業用ガスと関連機器を製造・販売する大陽日酸が、収益率の向上を目的としたデータ基盤を整備している。同社 電子機材ユニット 電子機材ガス事業部 海外営業部 電材DXプロジェクト プロジェクトリーダーの武知 将平 氏が「Salesforce World Tour Tokyo」(主催:セールスフォース・ジャパン、2024年6月11日、12日)に登壇し、データ基盤構築の実績などについて解説した。

 「当社は、単にガスを作って売るだけではなく、適正価格や安定した供給体制によって顧客のビジネスを支援したい。そのためには顧客が求めているものを理解し、生産上や経営上の課題にアプローチしていかねばならない」−−。大陽日酸 電子機材ユニット 電子機材ガス事業部 海外営業部 電材DXプロジェクト プロジェクトリーダーの武知 将平 氏は、こう力説する(写真1)。

写真1:大陽日酸 電子機材ユニット 電子機材ガス事業部 海外営業部 電材DXプロジェクト プロジェクトリーダーの武知 将平 氏

相対的に利益率が低い国内事業会社の収益を改善したい

 日本酸素ホールディングスは世界32の国と地域で事業を展開する。その傘下の大陽日酸は、日本での産業用ガスと関連機器の製造・販売を担っている。化学、鉄鋼、医療などの分野に顧客を持ち、高純度ガスや電子材料ガスを製造・販売する。他に、特殊ガスを製造する大陽日酸JFP、ガス関連設備や機器の設計・施工を手がける大陽日酸エンジニアリングを抱え、産業用ガスの国内市場シェアはグループ全体で約40%に上る。

 大陽日酸の武知氏が所属する海外営業部は、海外顧客向けにガスを販売している。中でも半導体関連企業を中心に、ガスの提供と、それに紐づく機器工事、メンテナンスサービスなどを提供する。半導体需要の高まりに伴い、同社のエレクトロニクス事業は「成長領域になっている」(武知氏)という。

 エレクトロニクス事業の重点プロジェクトとして武知氏は、(1)台湾TSMC(台湾積体電路製造)と(2)Rapidus(ラピダス)の工場建設を挙げる。TSMCが熊本県菊陽町に建設中の新工場には、半導体製造に必要なガス供給体制を整備。ラピダスが北海道千歳市に建設中の工場では、パイロットラインでのガス供給システムの設計・施工および供給を支援する。

 これらに加えて、2024年2月に開始した「電材DXプロジェクト」がある。「主なミッションは利益率向上」(武知氏)だ。武知氏は同プロジェクトのリーダーを務め、約20人のチームを率いる。主な取り組みは、エレクトロニクス事業を強化するためのCRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)の整備だ。

 電材DXプロジェクト立ち上げの背景には、「(1)海外と国内での事業利益率の差異と、(2)国内における非効率な業務プロセスの改善の2つの課題がある」(武知氏)。利益率の差異は、「2020年にホールディングス制に移行したことで、日本の利益率が欧米リージョンに比べて悪いことが可視化された」という。

 業務プロセスにおいては、「過去の風習から引き継いできた業務プロセスがまだ残っている。日本の製造業にありがちな課題かもしれないが、非効率な業務のプロセスを一気に解決したい」と武知氏は話す。