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鮮魚チェーンの角上魚類、新潟・東京の2拠点での戦略的仕入れにデータを活用
新潟と関東、長野で鮮魚チェーン店を展開する角上魚類が、商品仕入れを中心にデータ活用を進めている。バイヤーが市場での仕入れ時に利用する自社開発アプリケーションの「セリ原票アプリ」に入力・蓄積するデータを表示するダッシュボードも構築・利用する。気候や為替の変動により価格が高騰している魚類だが、仕入れ時のデータを蓄積・参照することで、商品力を高める仕入れや各店舗への確実な配送などにつなげる。
「鮮魚業界は、地球温暖化による魚種の変化・減少や、円高による価格高騰の影響を大きく受けている。顧客が求める魚を届けるには、仕入れ精度を高める必要がある」――。角上魚類 美園本社の商品調達本部 鮮魚部 関東鮮魚課 課長の椎名 秀樹 氏は、鮮魚を扱うことの難しさを、こう説明する(写真1の左端)。
新潟と東京の2市場から23店舗のための鮮魚を仕入れ
角上魚類は新潟県長岡市寺泊で創業した鮮魚専門店。現在は「角上魚類」ブランドで、新潟と関東、長野に23店舗をロードサイドを中心に展開している。漁港にある専門店同様に、新鮮で幅広い魚種を安価に提供するほか、鮮魚を使った寿司や惣菜なども販売することで連日、多くの顧客が来店する(写真2)。
店舗運営では2拠点体制を敷いている。新潟エリアを主に担当する寺泊本社(新潟県長岡市)と、関東・長野エリアを担当する美園本社(さいたま市岩槻区)だ。鮮魚の仕入れは、新潟に6人、豊洲に5人の計11人の商品調達本部のバイヤーが担当し、新潟市中央卸売市場(新潟市江南区)と豊洲市場(東京都江東区)の2つの市場で買い付けた鮮魚を管轄エリア内の店舗に配送する。
新潟と東京という地理的に離れた2市場を対象にしているため、「どちらの市場で仕入れるべきかを判断する必要がある」(椎名氏)。実際、「新潟で数量が充実していれば新潟から、豊洲の方が価格面で有利であれば豊洲から仕入れ、各店舗に納品するケースがある」(美園本社 商品調達本部 鮮魚部 関東鮮魚課 課長代理の坂ノ下 正樹 氏)という。
両市場を利用するうえでは「せりの方式が異なり、それぞれの対応が求められる」(坂ノ下氏)。新潟中央卸売市場は、せり値を高いほうから下げていく「せり下げ方式」を主流としており、「価格が下がるタイミングの見極めが重要になる」(同)。豊洲市場は、せり人と買い手が1対1で個別交渉する「相対」と呼ぶシステムが中心で「バイヤー自身の交渉力が仕入れ価格に大きく影響する」(同)というわけだ。
そこに最近は、海面温度の上昇などにより、捕れる魚種が変わったり、捕れなくなったりしている。安定供給に向けた養殖魚の生産も、漁業関係者の高齢化や価格高騰などのあおりを受けるなど、市場価格の変動要因が増えている。
坂ノ下氏は、「地方の港や市場とも連携を図りながら、どんな魚が上がっているのかを判断して買い付けるための情報共有が、より重要になっている。過去の買い付けデータから価格傾向を予測する重要性も高まっている」と話す。