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明治安田生命、全社での生成AI活用視野に営業職3万6000人が使うAIエージェントを導入

佐久間 太郎(DIGITAL X 編集部)
2025年3月4日

明治安田生命保険は、DX(デジタルトランスフォーメーション)戦略の一環として全社への生成AI(人工知能)技術の適用を加速する。第1弾として営業活動を支援するためのAIエージェントを導入。全社への適用を推進する全社横断組織を立ち上げ、AIデータ活用基盤も構築する。そのためにアクセンチュアと包括的パートナーシップ契約も結んだ。2025年1月16日に発表した。

 明治安田生命保険は、2030年までの10年計画「MY Mutual Way 2030」に「人とデジタルの効果的な融合」を重点方針の1つに掲げ、DX(デジタルトランスフォーメーション)戦略を推進している。2024年からの中期経営計画2期では、「生命保険の役割を超える」をテーマに(1)ひと中心経営の推進と働きがいの向上と(2)IT・デジタル投資のさらなる推進に力を入れる。

 中でも期待するのが生成AI(人工知能)技術だ。同社 執行役社長の永島 英器 氏は、「2022年末に登場した生成AIに触れ、社会と事業に対するインパクトの大きさを認識した。これは、人ならではの役割の高度化を実現するのに絶好の機会だと捉えた」と話す(写真1)。

写真1:明治安田生命保険 執行役社長の永島 英器 氏

営業3万6000人が使用するAIエージェントを導入

 生成AI活用の第1弾として2024年10月に導入したのが、営業活動を支援するためのAIエージェント「MYパレット」である。同社が「MYリンクコーディネーター」と呼ぶ営業職員、約3万6000人が利用する。「デジタル秘書」の位置付けで、新規顧客の開拓からアプローチ、提案、アフターフォローまでの営業プロセス全般を支援する(図1)。

図1:「MYリンクコーディネーター」と呼ぶ営業職員、約3万6000人が利用する「MYパレット」は「デジタル秘書」の位置付けで、営業活動全般を支援する

 MYパレットでは、営業活動の質を高めるのを目的に、(1)提案アドバイスや(2)訪問業務の効率化といった機能を提供する。そのためにAI技術を使って、顧客の年齢や、趣味・嗜好、過去の契約履歴、地域特性などを分析する。

 提案アドバイスでは、顧客のライフステージやニーズに合わせた保険商品やサービスの提案を支援する。商品提案の精度を高めるともに、営業担当者の提案スピードを高め顧客満足の向上につなげたい考えだ。

 訪問業務の効率化では、顧客訪問時にヒアリングした情報の入力と、入力情報に基づく、お礼文の作成などを支援する。音声でも入力でき、報告業務にかかる時間を削減し顧客対応に、より多くの時間を割けるようにするのが目的だ。

 明治安田ではこれまで、顧客訪問時には営業担当者が顧客情報を個別に調査し、提案内容を作成していた。地域や顧客ごとにニーズが異なるため情報管理も煩雑になり、多くの時間を割いていた。MYパレットの導入で、訪問準備や報告作業にかかる時間を従来比で30%削減できているとする。

 MYパレットは現状、営業支援に特化している。今後は、本社や事務職員約1万1000人などを合わせた全職員への導入を視野に入れ、ヘルスケアや法務、教育などに対しても領域特化型の生成AIを開発していく。

 そのためのAIデータ活用基盤「AI Hub プラットフォーム」の整備も進める(図2)。MYパレットも同基盤上で動作し、管理する顧客データを営業現場で即時に利用できるようにしている。AI Hub プラットフォームのクラウド基盤には「Microsoft Azure」(米Microsoft製)を使用する。

図2:AI基盤「AI Hub プラットフォーム」の全体像