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JAL、全グループの従業員が利用する生成AIアプリケーションを開発し導入

DIGITAL X 編集部
2025年6月17日

JAL(日本航空)は、社内業務の効率化と対応品質の向上を目的に、生成AI(人工知能)アプリケーションを開発した。全グループの従業員が文書作成や問い合わせ対応などへの利用を始めている。空港での業務に特化したアプリケーションも開発している。開発を支援した米アバナードの日本法人が2025年5月26日に発表した。

 JAL(日本航空)が開発した「JAL-AI」は、日常業務を対象にした生成AI(人工知能)アプリケーション。文書作成や問い合わせ対応などの日常業務に使用し、業務効率や対応品質を高めるのが目的だ。内勤者から空港で働くグランドスタッフまでのグループ従業員が共通のAI基盤を利用する。

 特にグランドスタッフに向けては、空港業務に特化した「空港JAL-AI」を開発した。チェックインカウンターや空港ラウンジなどでiPadから利用する。危険物検索やイレギュラーアナウンスの作成、ラウンジ入場条件検索などの機能を用意する。社内のアンケート調査では、グランドスタッフの90%以上が顧客対応と文書作成のスピードが向上したと回答。ラウンジスタッフの約70%はラウンジ入場条件に関する回答速度が改善したと回答したとする。

 生成AIアプリケーションの開発においては、AI技術を業務横断的に利用するためのAI基盤を構築・整備する。PCやタブレット、スマートフォンなどのマルチデバイスに対し単一インタフェースを提供する。

 AI基盤における生成AIアプリケーションの回答精度を高めるために、RAG(Retrieval-Augmented Generation:検索拡張生成)技術を使って社内の各種マニュアルやFAQ(よくある質問と答)、業務ガイドラインなどを取り込んでいる。2024年度時点では、間接部門に所属する社員の実質100%がJAL-AIを業務で利用できるだけの精度を確保できているという。生成結果に対しては初期段階からPDCAサイクルによる評価とフィードバックを実施している。

 生成AI技術の開発・導入に向けてJAAは、2023年4月にリスク評価や活用のあり方を検討するワーキンググループを立ち上げた。だが回答精度にバラツキが生じたためにプロジェクトを見直し、RAGの精度向上のためのプロジェクトを2024年1月に開始した。

 開発テーマとして(1)社内ナレッジの検索・活用、(2)他の業務システムとのAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)連携による情報取得、(3)整備部門におけるマニュアル検索の3つを設定した。

 同プロジェクトでは、米アバナード日本法人を開発パートナーに選んだ。議事録の自動作成や、ドライブ内ファイルの横断検索などの機能のアップデートの支援を受けている。今後は、社内ポータル情報のクロールや業務システムからのデータ取得などの機能拡張していく計画だ。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名JAL(日本航空)
業種交通
地域東京都品川区(本社)
課題社内の業務効率や現場での顧客対応品質を高めたい
解決の仕組み生成AI技術を業務横断的に利用できるAI基盤を整備しながら、全グループの従業員が、それぞれの業務に合わせた生成AIアプリケーションを利用できるようにする
推進母体/体制JAL、米アバナード日本法人
活用しているデータ社内マニュアル、FAQ、業務ガイドライン、会議議事録、社内ポータルの情報など
採用している製品/サービス/技術生成AIアプリケーション「JAL-AI」(JAL製)、空港業務向けアプリケーション群「空港JAL-AI」(同)
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