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航空機内装のジャムコ、設計から営業、保守までを3Dデータで連携

「3DEXPERIENCE CONFERENCE JAPAN 2025」より、技術イノベーションセンター 第二キャンパスグループの難波 孝晃 氏

山田 光利
2025年10月20日

設計用データは仮想空間用コンテンツに変換する必要がある

 ただ「設計用の3Dデータを仮想空間で使う映像用コンテンツにするためにはビジュアライゼーションモデルへの変換が必要になる」と難波氏は話す。具体的には「仮想空間で滑らかに動かすためのデータの軽量化や、素材の質感までをリアルに再現するためのマテリアル設定などだ。この変換作業の効率が悪ければ、3Dデータをビジネスの現場では使いにくい」(同)という。

 そこでジャムコは、設計用データを映像用コンテンツに変換するプロセスの自動化を図っている(図3)。そのために変換を自動化するためのプログラムを開発した。CADデータを分析し属性情報やマテリアル情報を読み取り、構成部品にもマテリアル情報を付与してから、ブラウザやVRデバイスの出力に適した「glTF」形式で出力する。

図3:ジャムコは、設計用データを映像用コンテンツに変換するプロセスの自動化を図っている

 このプログラムの運用に当たっては「後工程のコンテンツ制作者がマテリアル情報を1つひとつ設定する手間が大きいため、設計者が形状データを作る際にメタデータを付与するというルールを設定した」(難波氏)という。

 3Dコンテンツの制作には、スタジオ開発を支援したダッソー・システムズと共同で取り組んでいる。「ダッソーのエンジニアが持つコンテンツ制作の技術や考え方を得られ、自社だけでは時間がかかる変換を短期間で実現できた」と難波氏は説明する。

3Dコンテンツの利用範囲を社内教育などにも広げたい

 こうした取り組みで得た成果を基に、次なる課題として難波氏は(1)自動化プロセスの拡充と(2)利用シーンに合わせたコンテンツの最適化を挙げる。

 上述した自動化プロセスは2024年時点ではラバトリーにのみ適用できている。今後は「ギャレーなど他の製品についても拡張していく」(難波氏)計画だ。そのためには「これまでに構築したデータの軽量化やマテリアル管理の手法をさらにレベルアップさせる必要がある」(同)とする。

 コンテンツの最適化では「使う目的や見る人に応じたカスタマイズを可能にしたい」(難波氏)考えだ。例えば「営業・提案段階なら見た目の美しさやデザイン性を重視したビジュアルが有効だが、メンテナンス段階では構造や部品が分かりやすい技術的なビジュアルが必要になる」(同)からだ。

 加えて、3Dコンテンツの利用は現在、バーチャル・イノベーション・スタジオに限られている。「どこでも3Dコンテンツを、より手軽に体験できるための工夫もしていきたい」と難波氏は意気込む。「まずは顧客や社外に製品を体験してもらう場面を想定しているが、社員の技術研修や組み立てシミュレーションといった社内教育などにも広げたい」(同)考えだ。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名ジャムコ
業種製造
地域東京都立川市(本社)
課題航空機設備のオーダーメイド生産において、設計部門以外では3Dデータを十分に活用できていなかった
解決の仕組み社内に蓄積した3Dデータを活用しデジタルツインを構築し、顧客との仕様検討や営業提案、メンテナンス支援をVRデバイスを使った仮想環境に展開し、開発のリードタイム短縮を図る
推進母体/体制ジャムコ、仏ダッソー・システムズ日本法人
活用しているデータ設計時の3D CADデータおよびマテリアル情報
採用している製品/サービス/技術デジタルツイン構築サービス「Commercial Virtual Twin as a Service(VTaaS)」(仏ダッソー・システムズ製)
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