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JR東日本、山手線にパンタグラフのAI監視と遠隔ドローン点検を2026年4月から開始

DIGITAL X 編集部
2026年3月24日

JR東日本(東日本旅客鉄道)は2026年度から、列車のパンタグラフ(集電装置)を監視するAI(人工知能)システムと、電気設備を遠隔からドローンで点検する仕組みを導入する。車両のカメラ画像から異常を早期に検知し、ドローンによる現地確認と連動させることで復旧方法を短時間に判断し、被害の拡大防止と運転再開までの時間短縮を図るのが目的だ。2026年3月10日に発表した。

 JR東日本(東日本旅客鉄道)が山手線に導入するのは、列車のパンタグラフ(集電装置)を監視するAI(人工知能)システムと、電気設備を遠隔から点検するためのドローン(図1)。両者を組み合わせることで、これまで電気トラブルからの復旧に7時間がかかっていたケースで2時間程度の短縮を期待できるとし、種々のケースでの復旧時間の約30%程度の削減を見込んでいる。将来的には、中央線の東京駅~新宿駅間などの在来線区間や新幹線への適用も検討する。

図1:パンタグラフのAI監視による早期検知とドローンによる点検を組み合わせトラブル発生時の復旧時間の短縮を図る

 まず、パンタグラフのAI監視システムから導入する。山手線の恵比寿駅と鶯谷駅で2026年4月に、新橋駅と目白駅に同年8月に、それぞれトライアルを実施する(図2)。各駅に設置したカメラで走行中の列車上面を撮影し、大量の画像からパンタグラフが写っている画像を抽出。その画像からパンタグラフの損傷の有無を判定する(図2)。1列車当たり300~400枚以上の画像が撮影でき、判定に必要な画像を1~20枚程度に絞り込むことで解析の効率と精度の両立を図る。

図2:パンタグラフの異常を検知するAI監視システムの概要と山手線エリアでの展開計画

 損傷を確認すると同時に、指令所へ情報を送り、列車の運行を抑止するなどの判断ができるようにする。異常検知から初動対応までのリードタイムの短縮を図る。現状は、乗務員などからの通報が起点になっている。

 設備点検に当たるドローンは、2026年秋を目標に試行を始める。線路沿線にドローンドック(格納設備)を設置し、そこからドローンを遠隔操作で飛行させ、異常を検知した箇所を空中から点検する。復旧方法の判断を前倒しすると同時に、必要に応じて係員の出動準備を進められるようにする(図3)。現状は、電力部門の係員などが現地に出動して状況を把握している。

 2026年1月下旬の夜間に山手線・新橋駅付近で試験飛行を実施した(図3)。結果、無線通信やLTE(Long Term Evolution:携帯電話通信規格)通信を用いた安定飛行と、夜間でも鮮明な画像が取得できることを確認したという。導入に向けては、ドローンの鉄道施設への接触防止や運用エリア外への逸脱防止といった安全制御システムを確立する。

図3:東京・新橋駅付近で実施した検証で利用したドローンとドローンドックなど

 AI監視システムは、東京大学・フランス国立情報学自動制御研究所(INRIA)発のAIスタートアップであるコーピーと共同で開発した。ベンチャーキャピタル(VC)のJR東日本スタートアップが手掛けるプログラムによって採択されている。

 一方、ドローンによる遠隔点検は、インフラ設備の管理サービスを手掛けるCalTa(カルタ)と共同で進める。検証用の産業用ドローンには「Skydio X10」(米Skydio製)を採用した。

 JR東日本では、そのため故障箇所の特定や影響把握の把握に時間を要し、復旧方法や運転再開の見通しの判断の遅れが課題となってきた。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名JR東日本(東日本旅客鉄道)
業種交通
地域東京都渋谷区(本社)
課題パンタグラフなど電力設備の異常発生は乗務員や現場からの通報を受けてから現地で目視点検しており、認識の遅れや故障箇所の特定、影響の把握に時間を要し、運転再開までに時間がかかる
解決の仕組み駅に設置したカメラで車両上面を撮影しパンタグラフの異常を検知するとともに、現場にドローンを飛ばし遠隔から状況を確認する
推進母体/体制JR東日本、コーピー、CalTa
活用しているデータ走行中の列車を撮影したパンタグラフの画像、ドローンによる現地撮影映像
採用している製品/サービス/技術パンタグラフの異常を監視する「物体検出AI」および「損傷検知AI」(JR東日本がコーピーと開発)、産業用ドローン「Skydio X10」(米Skydio製)
稼働時期2026年4月(山手線での運用開始時期)