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イトーキ、オフィスの生産性高めるAIサービスの投入など“AI経営モデル”に転換へ

佐久間 太郎(DIGITAL X 編集部)
2026年4月21日

生産部門や営業部門などもAI技術を積極活用

 家具メーカーからの事業転換に向けイトーキは「AI技術を経営の中核に据える」(湊氏)。顧客向けAIサービスの開発だけでなく、自社内でのAI技術活用も推進する。そのため2023年6月に刷新したERP(Enterprise Resource Planning:企業資源計画)システム「Oracle Fusion ERP/SCM Cloud」(米オラクル製)へのデータ統合を進めてきた。

 DX(デジタルトランスフォーメーション)本部 DX統括部長の齊藤 頼芸 氏は「データの土台が整った。従業員の判断をAI技術が支援することで、より創造的な活動に注力できるようになっている。四半期決算のリードタイムは33%、受注承認にかかる時間は90%、それぞれ短縮できている」と話す。

 既に営業部門では、自社開発したAIエージェント「Sales Partner AI AGENT」を利用している(図4)。自社開発の営業向けツール「SAGACITĒ(サガシテ)」を組み込み、対話形式で過去の営業活動から提案資料などを作成できるようにした。

図4:「Sales Partner AI AGENT」の概要

 執行役員 営業本部副本部長の森田 良一 氏は「営業1人当たりの売り上げ目標を、2020年の2億3000万円から2029年に3億7000万円にまで引き上げる計画だ。新人教育のリードタイムも1年から6カ月に短縮し1人当たり付加価値の最大化を目指す」と話す。

 また生産部門では、家具や什器の設計にジェネレーティブデザインを試験的に導入している。設計要件からAI技術を使って最適な形状を生成する。生産本部 生産DX統括部長の井和丸 宏 氏は「機能性だけではなく、商品価値を高めるためには、デザインや意匠を高次元で両立させる必要がある」と、その目的を説明する。

 AI技術の全社利用に向けては、全従業員をAI人材に位置付ける(図5)。AI人材は(1)AI技術を使いこなして日常業務を効率化するAIユーザー、(2)業務課題をAI技術で解決するための手法を企画・設計するAIスペシャリスト、(3)AIサービスを内製開発するAIエンジニアの3層に分けている。高い専門性を持つ人材は、ベトナムのハノイ工科大学との提携などを通じて獲得してもいる。

図5:イトーキのAI人材は3層に分けて育成する

 ボトムアップによる活用例も生まれている。「後藤学校」と呼ばれる活動が、その一例。AI技術の専門家ではない工場従業員の後藤氏が、自らがRPA(Robotic Process Automation)ツールを使って業務改善した経験を社内で共有するために開催する勉強会だ。井和丸氏は「従業員の20%が自発的に参加している。現場自らが業務を改善し、質の高いデータを生み出す文化こそがAI経営におけるエンジンになり得る」と期待を寄せる。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名イトーキ
業種製造
地域東京都千代田区(本社)
課題働き方の変化に伴い、顧客企業がオフィスの投資対効果や生産性を高めるための意思決定や運用改善では人手の限界を超えている
解決の仕組みオフィスの配置や利用率の最適化を支援するためのAIエージェントを開発し、顧客企業に提供する。社内でも各種AIエージェントやAI技術を活用し、営業活動や生産活動の最適化を図る
推進母体/体制イトーキ
活用しているデータオフィスのWi-Fi接続ログ・予約スケジュール、図面・写真・アンケート結果、経営方針資料などの非構造化データ、家具・什器の設計データ、オフィス構築支援実績など
採用している製品/サービス/技術ERPシステム「Oracle Fusion ERP/SCM Cloud(米オラクル製)、センシングのためのAIデバイス「TABLE BOX」(イトーキ製)、営業向けAIエージェント「Sales Partner AI AGENT」(同)、営業支援ツール「SAGACITĒ」(同)
稼働時期2026年(3種のAIサービスの提供開始時期)