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ハナマルキ、「自走する組織」を原動力に“塩こうじ”を企業成長の柱へ
「Manufacturing Japan Summit 2026」より、取締役 平田 伸行 氏
地道な宣伝・PRで露出を増やし、社外の認知と社内の自信を醸成
平田氏自身、ハナマルキ入社以前から複数の企業で宣伝・PRを担当してきたが、宣伝・PRは、認知度向上などの対外的な効果に加え、社内のモチベーションが確実に上がることも体験してきた。宣伝・PRを平田氏は「社外向けであると同時に、最強の社内マネジメントツール」と強調する。
宣伝・PRで心掛けたのは「露出の最大化」「とにかくしつこく液体塩こうじを訴えること」だ。
その狙いを平田氏は「対外的な露出が増えると、商品に対して社員の自信が付いてくる」と説明する。「『液体塩こうじの記事を見たよ』という声が外から社員に届くと、モチベーションが上がる」(同)からだ。
ブームが去り、メディアから露出が減ってきていた中「どうやって“塩こうじ”という文字を世の中に出していくかに必死に取り組んだ」と平田氏は振り返る。念仏のように“塩こうじ”を唱え続けることで、意味や意義を伝え続ける。これらを事業戦略と一体で進めた」(同)のである。
さらに、自発的な組織を作ることを目指して、塩こうじを訴求するためのキーワードの開発にも取り組んだ。「『発酵』『健康』といったキーワードにとどまらず、社会的な意義やグローバルな視点を加えることで深みを出す」(平田氏)ことを目指した。例えば「新しい日本古来の調味料」「世界に通用する調味料」などだ。
テレビCMのような大型施策の一方、野外イベントに集まった参加者に肉を塩こうじで焼いて提供したり、自社の商品サンプルを配布したりといった地道な宣伝活動に取り組む。イベントには社員も参加し「社員が顧客と出会える場を作ることを意識した」(平田氏)という。
「自ら考え、変化を楽しむ」人材の採用と、挑戦を後押しする評価制度への刷新
組織改革において、企業の成長に欠かせないのが人材採用だ。平田氏は「会社を軌道に乗せるには同志が不可欠だ」(平田氏)と強調する。だが、どれほど優れた戦略を描いても、それを形にする「人」が動かなければ、組織は停滞する。
そのため、採用は平田氏自らが担当する。採用において平田氏が最も重視しているのが「単に指示を遂行するのではなく『自ら考え、動く』こと、そして未知の状況や『変化を楽しみ、自らを変え続けられる』資質」だ。「人材の質が組織の業績を左右することを確信しているからこそ、採用に徹底してエネルギーを注ぐことが、最大の競争優位性になる」と平田氏は語る。
具体的な選考プロセスでは、事業へのコミットメントや価値観の適合性を深く掘り下げる。これまで採用した社員は「既存の枠組みにとらわれず自走しており、現在のハナマルキの躍進を支える原動力となっている」(平田氏)
液体塩こうじでの成功は社員の自信を生み、それが自走する組織へとつながっていく。実際「塩こうじ事業だけでなく、みそ、即席みそ汁も売上が伸び、相乗効果が表れている」と平田氏は強調する。
自走する組織が形作られてきたことを受け、ミッションやビジョン、行動指針の策定にも取り組んだ。ミッションは「素材とモノづくりを大切にしていく」を、ビジョンは「発酵調味料メーカーとして世界の食シーンに貢献する」を、行動指針は「誠実さを忘れない」「自分の意見を述べ、結論に従う」などを掲げる。
また、人事評価制度も変更した。年齢重視の昇格を廃止し、若手でも実力次第で異動や昇格を検討できる仕組みに舵を切る。コミュニケーションの方法としては、社長との「1 on 1ミーティング」や、チャットツールなどの活用、多数の部署横断プロジェクトの立ち上げなどの展開を進めている。さらには年2回の「ハナマルキアワード」という全社的な表彰制度を設けてもいる。
平田氏が説く自走とは「ビジョンを理解した上で、現場が判断し動くこと」だ。無理に人を変えるのではなく、仕事の意味を共有し、現場がやり切れる環境を整える。「宣伝や採用活動も自然に行動が変わる環境作りの一環」(平田氏)とする。
講演の最後に平田氏は「自走する組織に完成はない。状況が変わればやり方も変わる。だからこそ私たちは考え続け、今も次のステップに向き合っている」と力を込める。
