- UseCase
- 製造
Umios、消費者起点の販売計画策定に向けたAIシステムを本格稼働
食品大手のUmios(ウミオス、旧マルハニチロ)は2026年3月、新たな社名の下で「消費者起点のバリューサイクル」の構築を掲げ、営業活動の効率化や高度化に向けたDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する。その中核である販売計画の策定では、時系列基盤モデルによる予測値を使うAI(人工知能)システムの本番稼働を2026年6月から開始している。
「AI(人工知能)技術が人間の仕事を奪うのではなく、ロジカルな予測値をたたき台として導出し、担当者は現場独自の目線で点検・修正して最終責任を持つ。そうして本来やれるはずの業務に集中できる状態を作っていきたい」--。Umios DX推進部 DX推進課 主任の浦本 和司 氏は、こう話す(写真1)。Umios(ウミオス)は、水産物の調達から加工、養殖、家庭用冷凍食品、業務用食品などの事業を展開する。2026年3月にマルハニチロから社名を改めた。
同社は「消費者起点のバリューサイクル」の構築を軸に、営業活動の効率化および高度化に向けた営業DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進している。その取り組みの一環として着目した業務が、販売計画の策定である。
販売計画は、過去の販売実績に加え、営業担当者が得意先から得た新規導入や終売、スポット販売といった販売増減情報を反映しながら、月間の販売数量を予測して計画として入力する業務だ。同社 DX推進部 営業デジタルマーケティング推進課 主任の大木 優子 氏は「営業担当者は毎月、商品ごとに手作業で入力しており、毎月半日ほどを要するなど負担が大きかった」と振り返る。
計画の再現性が高められるように時系列基盤モデルを利用
そこでUmiosは、販売計画を自動化するためのAIシステムを2026年6月から本格稼働している。現在対象とするのは、外食などに向けた業務用カテゴリーが中心。「需要が比較的安定しているためで、スモールスタートを切る」(浦本氏)のが狙いだ。
算出した予測値はBI(Business Intelligence)ツール上に可視化する。各支社の担当者はその予測値を確認し、必要に応じて修正した上で最終的な計画へと反映している。導入の結果「営業担当者の入力業務に対して、業務用カテゴリーを対象に全社で年間約4200時間の工数削減が見えており、豊富な情報量を前提に精度の高い計画立案が実現している」と大木氏は評価する。
システム環境としては、既存の基幹データベースなどには手を加えず、その外側にAI予測の仕組みを独立して配置する日次バッチ構成を採用している(図1)。予測値の算出にはには、米AWS(Amazon Web Services)の時系列基盤モデル「Chronos-2」を採用している。「販売予測には時系列データが重要である」(浦本氏)としたためだ。
具体的には、実行環境の「AWS Lambda」がデータウェアハウス(DWH)「Amazon Redshift」から過去実績を、NoSQLデータベース「Amazon DynamoDB」から販売増減の見込み情報をそれぞれ取得して、ストレージ「Amazon S3」へCSV形式で保存する。機械学習サービス「Amazon SageMaker」上で動作するChronos-2がそのデータを読み込んで予測を出力し、再びLambdaで整形してRedshiftへ戻す仕組みだ。
開発の初期段階では、社内AIとしての汎用LLM(Large Language Models:大規模言語モデル)を使った検証もした。ただし、「数値の予測結果に再現性がなく、毎回の出力値が変わり、一貫性を保てない点が実運用上のデメリットだった」と浦本氏は説明する。「モデルのバージョンアップによって出力の傾向が変わる懸念もあった」(同)
プロジェクトは2025年上半期に開始した。開発にはグループシステム会社であるUmiosテック、そしてアーキテクチャーの構築には米AWS日本法人が協力している。

